本研究では、15mass%のCrを含むフェライト鋼について、Co添加に伴う磁気特性の変化とクリープ強度の関係を調査した。最大6mass%までのCo添加は室温では固溶強化と析出強化にほとんど寄与しないことが確認された。しかし、650℃から750℃の範囲ではCo添加量の多い鋼ほど最小ひずみ速度が小さく、クリープ強度が高かったことから、Co添加はクリープ強化に効果的であることが確認された。このクリープ強化は磁気特性変化に伴う拡散速度の低減によって説明される。すなわち、Co添加によって鋼の体積磁化が室温から約800℃の温度範囲で増大し、その効果は添加量が多いほど大きくなることが確認され、Co添加量が異なる鋼種間の最小ひずみ速度の比と体積磁化の差は温度に対して類似した変化を示したことから、鋼の磁化の大きさがクリープ強度と密接に関連しており、磁化が大きいほどクリープ強度が上昇することが示された。Co添加により磁化が増大した鋼種とそうでない鋼種を比較した場合、両鋼ともに磁化が大きい低温域や強磁性を失う高温域では顕著な強度差が生じないが、一方の鋼種のみが強磁性を失い、もう一方の鋼種は磁化を維持する温度範囲において顕著なクリープ強度差が生じたと理解される。本研究の成果は日本鉄鋼協会の論文誌「鉄と鋼」と同協会欧文誌「ISIJ international」および日本鉄鋼協会第181回春季講演大会にて発表した。
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