研究実績の概要 |
本研究では、K2NiF4型構造(層状ペロブスカイト型構造)におけるカチオンオーダー(この構造を二重K2NiF4型構造と命名)とそれに起因する物性発現に注目した研究を行ってきた。はじめに、(La1/2Sr1/2)4MnMO8 (M = Co ,Ni) とSr4CoMO8 (M = Nb, Ta)の合成を、長時間徐冷によるカチオンオーダー促進のアイデアに基づいて進めた。前者では、徐冷による(局所的なカチオンオーダー)磁性の変化が見られた。しかし放射光X線回折による精密構造解析より、結晶構造の二次元性に起因して、結晶構造全体でのカチオンオーダーは起こっていないことが分かった。次に異種カチオンオーダーのみならず、電荷や電子軌道秩序に起因する二重K2NiF4型構造の物性にも注目した。本研究では、Mn4+への電子ドープ系Sr4Mn1-xMxO8 (M = Nb, Ta, X < 0.25)の合成に成功した。磁気特性評価から、低温で二次元性と非磁性イオンの導入によるスピングラス状態の出現が見られたが、電荷や電子軌道秩序は現れなかった。さらにこの物質に関連して、ペロブスカイト型酸化物CaMn1-xSbxO3の磁性に注目した研究を行った。その結果「軌道秩序とスピン構造転移に起因する、リバーシブルな熱誘起自発磁化反転現象」が起こることを発見した。
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