研究課題
本研究課題では、新規物質群二重K2NiF4型酸化物やその類縁物質に注目した革新的な機能性物質の創出を進めてきた。本研究で最初に注目した二重K2NiF4型酸化物に関しては、結晶構造の二次元性に起因して完全なカチオンオーダー(二重化)が起こらないことがわかった。そこで研究対象をペロブスカイト型構造まで広げることとした。その結果、2つの重要な発見があった。発見の1つ目として、(1-x)PbVO3-xBiCoO3固溶体における金属間電荷移動による極性構造の制御がある。PbVO3とBiCoO3はいずれもPbTiO3型の極性(強誘電)構造を有する。超高圧合成法を用いて両者の固溶体を合成することで、自発分極値の変化と常誘電構造への相転移が起こることを発見した。放射光実験からこの起源がCoイオンとVイオン間の電荷移動によることを明らかにした。さらにこの知見を基に(1-x)PbVO3-xBiCrO3固溶体の研究を行った。この系では金属間電荷移動は起こらなかったが、温度変化で絶縁体-金属相転移に起因する極性-非極性構造相転移が起こることを発見した。これらの成果は、圧電・強誘電材料や負熱膨張材料の開発における重要な知見となる。発見の2つ目として、CaMn1-xSbxO3における温度変化による自発磁化反転現象がある。これはより平易な言葉でいえば、温度変化だけでN極とS極が反転する磁石である。このような現象は、熱磁気モーターや記憶素子などへの応用が期待される。原理を解明するために、J-PARC NOVAにおける粉末中性子回折と磁気構造解析、第一原理計算を用いた研究を行った。その結果、電子軌道秩序クラスターの成長に起因して物質中に二種類の弱強磁性相が共存し、温度によりそれらの分率が変化することが原理であることが分かった。
プレスリリース
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Applied Physics Letters
巻: 117 ページ: 112404~112404
10.1063/5.0017506
Chemistry of Materials
巻: 32 ページ: 6892~6897
10.1021/acs.chemmater.0c01934
https://www.tohoku.ac.jp/japanese/2020/08/press20200825-02-ion.html