研究課題/領域番号 |
19K15281
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
山本 雅納 東北大学, 多元物質科学研究所, 助教 (70802966)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 炭素材料 / メタン |
研究実績の概要 |
多孔質炭素材料 (porous carbon materials) を触媒場とし、その細孔径を機械変性によりナノ~メソの範囲で連続的に任意に制御することで、電子のみならずイオンの移動を能動的に制御した前例の無い触媒反応場の構築ならびに構造-活性相関を得ることを本研究課題の目標としている。2019年度は、まずはそのようなナノ炭素材料の開発を検討した。この過程で、酸化物ナノ粒子鋳型に対するメタンを炭素源とした気相化学成長における炭素化挙動の理解について、期せず深めることができた。具体的には、様々なガス雰囲気下における赤外分光法 (infrared spectroscopy) を酸化物ナノ粒子に対して室温~900度の範囲で検討するとともに、炭素化の反応速度および反応気相生成物を熱重量分析 (thermogravimetry) および質量分析計 (mass spectrometry) にて評価し、また得られた実験結果を密度汎関数法 (density functional theory) による計算化学により裏付けることで、初期過程であるメタンの吸着解離が、酸化物表面の構造化学変化を経て効果的に進行することを見出した。他方で、分子を前駆体にした炭素材料による物質変換反応についても初期検討を達成しており、現在は構造-活性相関を検討中である。2019年度に得られた分子論的・速度論的知見をベースに、2020年度では、より優れた超柔軟三次元多孔質炭素材料の構築、超柔軟炭素材料場へ触媒サイトの埋め込み、および触媒活性評価を検討したい。また、表面反応の反応速度論的解析と第一原理計算による計算化学的・分子論的理解を引き続き検討することで、2019年度に浮上した課題である「どのような表面が」「どのようにして」炭素源であるメタン分子を活性化して炭素化が進行しているのかについての理解を深める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度はナノ炭素材料の開発過程で「酸化物ナノ粒子鋳型に対するメタンを炭素源とした気相化学成長」における炭素化反応機構ならびに反応速度論の理解を予期せず深めることができた。具体的には、初期過程であるメタンの吸着解離が、酸化物表面の構造化学変化を経て効果的に進行することを見出した。このような知見は、より普遍的に優れたナノ炭素材料を合成する足掛かりとなりうることから、次年度はこちらについてより詳細な反応機構解明を併せて行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
上述の通り、2019年度はナノ炭素材料の開発に欠かせない炭素化反応機構に関する理解が一部達成された。このような化学反応機構の理解は材料科学に普遍的な価値を有しており、2020年度は引き続きこの理解の深化についても努める予定である。具体的には、反応速度論的解析と第一原理計算による計算化学的な表面反応の分子論的理解を目指すことで、「どのような表面が」「どのようにして」炭素源であるメタン分子を活性化して炭素化が進行しているのかについての理解を深める予定である。また、これに並行して、当初目的としていた炭素材料の合成・各種評価についても実施を予定している。
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