研究課題
2020年度は,2019年度で明らかにしたPbTeの光励起モデルをもとに,さらに詳細な光励起光学特性変化・誘電関数変化の解析を行うとともに,他の共鳴結合結晶材料の光学特性の温度依存性についての測定を行った.昨年度明らかにしたPbTeの光学特性の温度依存性のデータをもとに、光励起後の光吸収量の過渡的な変化を解析することにより,光照射により非平衡状態となったPbTeの電子系と格子系が,両者が等しい温度を有する熱的状態に到達するまでの時間を決定することに成功した.このことは,fsレーザー光の照射によって生じる現象が,光励起による非熱的な状態においてのみ進行する現象か,試料温度の上昇が支配する現象かを判断することを可能にする,という点で重要な結果である.さらに光照射後の誘電関数変化について,レート方程式を用いて解析することにより,上記過程と整合性のある解析結果を得ることができた。本研究で観測したすべてのprobeエネルギーにおける誘電関数変化を統一的なパラメータで表すことに成功しており、信頼性の高い解析結果であるといえる。また、代表的な光相変化材料であるGe2Sb2Te5についても光学特性の温度依存性の測定を行った。結果として、PbTeと同様に、試料温度の上昇に伴って光吸収量の大きな減少が確認された。その一方で、PbTeとは異なり、減少には明確なピーク構造が観測されなかった。そのため、PbTeと同様の解析は行うことができず、可視光領域の光学特性に着目することによっては光照射後の非熱的な状態にある時間領域を決定することはできなかった。しかしながら、光学特性以外の物質量に着目し同様の解析手法を用いることにより現在でも議論されているGe2Sb2Te5の超高速アモルファス化が熱的な過程か、非熱的な過程かという問題についても回答することが可能であると考えられる。
すべて 2020
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Advanced Functional Materials
巻: 30 ページ: 2002821~2002821
10.1002/adfm.202002821