研究課題
次世代電気化学デバイスの実用化のため、高性能なイオン伝導体の開発は急務である。代表的なセラミックス系イオン伝導体では、不純物ドーピングによってイオンキャリアを導入していくが、ある程度以上不純物濃度を増やしていくと伝導度が低下してしまうものがほとんどである。これは、キャリアと不純物の会合によるキャリア移動度の低下によって伝統的に説明されてきたが、一方で、移動度がほとんど変わらないか向上するような系も見出されている。そこで本研究では、中温動作型燃料電池の電解質材料として有望視されているジルコン酸バリウムを題材に、不純物元素の違いが伝導度に及ぼす影響の微視的理解獲得を目的とし、第一原理計算を基盤としたシミュレーション手法の開発と応用を行った。ドーピングしたイオン伝導体は膨大な原子配置の自由度を有しており、高濃度ドーピング時の不純物およびキャリアの有限温度分布を標準的な第一原理計算だけで計算するのは計算コストの観点から不可能である。そこで本研究では、レプリカ交換モンテカルロ法による高並列配置サンプリングと、機械学習モデルの能動学習による第一原理計算の加速を組み合わせる計算フレームワークを開発し、YドープおよびScドープジルコン酸バリウムに適用した。その結果、従来概ねランダムに分布すると考えられてきたドーパントがある程度の規則性を有して配置し、かつその規則性が不純物元素によって大きくことなることが分かった。これは、不純物元素によるキャリア移動度の違いを説明する重要な手がかりである。また、同様の手法を用いて、プロトン伝導性発現の鍵となる水和(プロトン導入)反応の熱力学解析も進めた。Scドープ系におけるX線吸収分光や熱重量分析との詳細な比較により、Scに隣接した酸素欠損が水和反応を活性化し、Zrに隣接したサイトは水和にほとんど寄与しないことを初めて明らかにした。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件) 備考 (1件)
Chemistry of Materials
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https://www.yamagata-u.ac.jp/jp/information/press/202303161/