研究課題/領域番号 |
19K15290
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
布谷 直義 大阪大学, 工学研究科, 助教 (40715314)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 環境触媒 / 亜酸化窒素 / 直接分解 |
研究実績の概要 |
本研究では、地球温暖化およびオゾン層破壊の原因となる亜酸化窒素(N2O)ガスを、高効率で分解できる新規なN2O直接分解触媒の創成を目的としている。 2019年度は、立方晶C型希土類三二酸化物構造を有する酸化イッテルビウム(Yb2O3)に着目した。立方晶C型構造は、蛍石型構造から4分の1の酸化物イオンが欠損した構造であり、酸化物イオン欠損に由来する広い格子内間隙を有している。したがって、これらの間隙がN2Oの吸着および分解の活性点になると考えられる。さらに、Yb2O3の格子内酸素も反応に関与させるため、価数変化しやすいコバルトイオン(Co2+/3+)を添加することにより、酸化還元能を付与したYb2O3-Co3O4の合成を行った。その結果、(Yb0.90Co0.10)2O3-dにおいて最大の活性が得られ、500℃でN2OをN2とO2まで完全分解できることを明らかにした。 さらに、立方晶C型構造の格子内間隙がN2O直接分解活性に寄与することを明らかにするため、組成により蛍石型構造または立方晶C型構造をとる、(Zr1-xYx)O2の合成を行い、N2O分解活性を詳細に調べた。その結果、酸化物イオン欠陥量が増加、即ち、格子内間隙が広いほど、N2Oが多く吸着され、高い活性を示すことがわかった。また、蛍石型構造を立方晶C型構造を比較した場合、格子内間隙が広い立方晶C型構造はN2O吸着量も多く、高いN2O分解活性を示したことから、立方晶C型型構造における格子内間隙が、N2O分解の吸着および活性点になっていることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
格子内間隙を有する立方晶C型構造のYb2O3に対し、格子内酸素を寄与させるために価数変化しやすいCo2+/3+を添加することにより、500℃でN2OをN2とO2に完全分解できることを見出している。さらに、ZrO2-Y2O3のN2O分解活性の詳細を調べることにより、格子内間隙がN2Oの吸着および分解の活性点となっていることを明らかにした。これらの成果は、既に原著論文として掲載されている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究にて、格子内間隙がN2O直接分解活性に影響することはわかっている。また、格子内酸素を関与させるために酸化還元能を向上させたところ、活性が向上することも明らかにしている。そこで、格子内間隙および格子内酸素、それぞれが活性に与える影響についても詳細を調べる。さらに、それらの知見を活用することにより、さらに低温でN2OをN2とO2にまで完全分解できる高活性直接分解触媒の創成を行う。
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