研究課題
本研究では、地球温暖化およびオゾン層破壊の原因となる亜酸化窒素(N2O)ガスを、無害な窒素と酸素まで高効率で分解できる新規なN2O直接分解触媒の創成を目的としている。母体結晶としては、立方晶C型希土類三二酸化物構造に着目した。ここで、立方晶C型構造は、蛍石型構造から四分の一の酸化物イオンが欠損した構造であり、酸化物イオン欠損に由来する広い格子内間隙を有していることから、これらの間隙がN2Oの吸着および分解の活性点になると考えられる。2019年度の研究において、蛍石型構造と立方晶C型構造を比較した結果、格子内間隙が広い立方晶C型構造の方がN2O吸着量が多く、高いN2O分解活性を示すことを明らかにしている。さらに、立方晶C型構造を有する酸化イッテルビウム(Yb2O3)に価数変化しやすいコバルトイオン(Co2+/3+)を固溶させることにより、500℃でN2Oを完全分解できることを見出している。2020年度は、価数変化しやすいだけでなく、Yb3+よりも低価数を取る銅イオン(Cu+/2+)を添加することにより格子内に酸化物イオン欠損を導入し、N2Oをより吸着させやすくしたYb2O3-CuOの合成を行った。その結果、(Yb0.85Cu0.15)2O3-δにおいて最大の活性が得られ、400℃でN2OをN2とO2まで完全分解できることを明らかにした。この触媒について構造解析を行った結果、酸化物イオン欠損が形成されていることが確認された。さらに、水素昇温還元測定結果より還元特性が向上していたことから、Cuイオンの添加により酸化還元能が付与されたと考えられる。以上の結果より、Yb2O3-CuOにおいては、酸化物イオン欠損導入により、N2OがC型構造の格子内間隙に吸着しやすくなり、さらにCuイオンの酸化還元により格子内酸素が供給されやすくなったことで高い活性が実現できたと考えられる。
すべて 2021 2020
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件)
Functional Materials Letters
巻: 13 ページ: 2050040~2050040
10.1142/S179360472050040X