研究課題
本研究は、ダイヤモンドのCVD成長時に金属原子を意図的にドーピングすることで、基板から膜中に伝搬する転位を終端する金属援用終端法を提案し、その効果実証とメカニズム解明を目的とする。熱フィラメント (HF) CVD法による結晶成長技術をベースとし、CVD成長時にワイヤーから金属原子を意図的に導入することにより、結晶の高品質化にチャレンジし、さらにこの金属原子導入層をバッファ層としたデバイス動作特性改善に取り組む。2019年 (初年) 度は、熱フィラメントCVD法によるホモエピタキシャル成長と、結晶性評価、金属原子導入層をバッファ層としたショットキーバリアダイオード (SBD) の特性改善に取り組んだ。WもしくはTa原子が~1E19 cm-3混入する条件で数ミクロンのエピ膜を成長したところ、転位密度の低減が確認された (基板中の転位密度2E6cm-2に対し、膜中では3E4cm-2)。なお、転位密度はカソードルミネッセンス法によるBand-A発光 (転位由来) のスポット密度により評価した。この転位終端層は金属原子が混入しているため、半導体ドリフト層として直接用いることはできない。そこで、金属原子導入層をバッファ層として、その上部にマイクロ波プラズマCVD法でドリフト層を形成した。バッファ層導入後は、リーク電流の低減と耐圧向上、理想因子およびショットキー障壁高さの面内均一性向上が確認された。また同様の効果を、モザイク基板、ヘテロエピタキシャル基板、導電性高温高圧基板上で確認した。2020年 (最終年) 度は、結晶性およびデバイス特性改善のメカニズム解明を目標に、金属原子導入膜の微細構造解析に取り組む予定である。
2: おおむね順調に進展している
金属原子導入という新しい結晶成長の切り口で、結晶品質の大幅な向上に成功し、多種多様なダイヤモンド基板上(CVD基板、モザイク基板、ヘテロエピタキシャル基板、導電性基板)でのショットキーバリアダイオードのデバイス特性および均一性改善を確認した。次年度はこれらの結果を基に、金属原子導入膜中の微細構造解析を実施する予定である。
当初の研究計画に則って,研究を推進していく予定である。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (12件) (うち招待講演 3件) 備考 (1件)
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