研究課題/領域番号 |
19K15297
|
研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
村田 正行 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エネルギー・環境領域, 主任研究員 (80717695)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | ゼーベック係数 / 散乱機構 / 熱磁気効果 / 電流磁気効果 |
研究実績の概要 |
本研究では、熱電材料において電流熱磁気効果の測定により高いゼーベック係数の発現機構を解明することを目的としており、当該年度には磁場中の熱電効果や電流磁気効果を評価する手法の確立を進めた。 バルク、薄膜、ナノワイヤー等の熱電材料において磁気ゼーベック効果やネルンスト効果等の磁場中の熱電効果とホール効果や磁気抵抗効果等の電流磁気効果を、±5Tの磁場中において4.2Kから300Kの温度範囲において測定する技術を確立した。確立した測定技術により様々な材料における磁場中の熱電物性の評価を行った。 バルク材料においては、磁気ゼーベック効果と、ネルンスト効果、ホール効果、磁気抵抗効果の測定を行い、キャリアの散乱機構やキャリア移動度の解析を行った。また、薄膜においては4.2Kにおける電流磁気効果の測定によりシュブニコフ・ド・ハース振動の測定を行い、バルクの有効質量から大きく変化していないことを確認した。ナノワイヤーにおいては磁気ゼーベック効果と磁気抵抗効果の測定を行い、室温領域において緩和時間の変化によりゼーベック係数が上昇し、磁気抵抗効果が抑制される可能性があることが分かった。 さらに、ボルツマン方程式を利用した磁場中の熱電効果や電流磁気効果に関するモデル計算の確立も進めている。バルクの計算では磁場中での熱電効果と電流磁気効果をほぼ再現する計算モデルの確立に成功した。また、ナノワイヤー化における緩和時間の変化を考慮したモデル計算を行った結果、実験結果の傾向をおおよそ再現することに成功した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の実施計画通り、バルクや薄膜、ナノワイヤー等の熱電材料において、磁場中の熱電効果と磁気抵抗効果を±5Tの磁場中において4.2Kから300Kの温度範囲において測定する技術を確立し、様々な材料における測定の結果、ネルンスト効果の測定やシュブニコフ・ド・ハース振動の測定に成功し、熱電材料におけるキャリアの散乱機構や有効質量などの詳細な物性評価を行うことに成功している。
|
今後の研究の推進方策 |
今年度確立した、バルクや薄膜、ナノワイヤー等の熱電材料における、磁場中の熱電特性や磁気抵抗効果の測定技術を利用することで、来年度以降、さらに様々な材料における詳細な物性測定を進める。材料における散乱機構やキャリア移動度、有効質量等の詳細な物性を明らかにし、これらとゼーベック係数の関係について調べる。高ゼーベック係数を得るための機構と、そのための材料構造の関係を解明することを目指す。
|