研究課題
Sc添加AlN固溶体の圧電特性はwurtzite相中のSc固溶量に応じて変化するため、Sc濃度に対するwurtzite相の熱力学的安定性は材料設計上、重要である。薄膜における添加元素の固溶挙動は、基板との界面に生じる歪エネルギーや表面エネルギーなどの影響を受けるため複雑である。本研究では、薄膜固有のエネルギーを第一原理計算により評価し、相平衡の熱力学計算に導入した。Al-Sc-N 3元系の相平衡は実験報告が少なく、熱力学データベースは未整備の状態であった。そこで、第一原理計算やデバイグリュナイゼン近似をCALPHAD法に援用し、熱力学データベースの整備を実施した。本研究で構築した熱力学データベースより計算した1000℃のAl-Sc-N 3元系状態図は、実験により報告されている状態図とよく整合していた。また、50mol%N断面のwurtzite相はSc濃度に対して2相分離する傾向があることがわかった。しかし薄膜の実用材料では、wurtzite相にScは20mol%程度固溶することが知られており、計算結果と符合しない。そこで、基板と薄膜の間に生じる歪エネルギーを算出し、熱力学モデルに反映させたところ、2相分離が抑制されることが示された。したがって、実際の薄膜でウルツ鉱相にScが多く固溶する要因の一つに薄膜と基板の間の歪エネルギーが影響していると考えられる。また、基板と薄膜の間に生じる歪エネルギーを計算するには、臨界膜厚の情報が必要である。本研究では、wurtzite相とrock salt相の臨界膜厚を第一原理計算により求めた。Wurtzite相については先行研究の結果ともよく整合しており、本計算の信頼性を確認することができた。これにより、薄膜の下地として様々な材料を導入した場合、wurtzite相とrock salt相の安定性の競合を見積もることが可能になった。
すべて 2021 2020
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件)
Materials
巻: 14 ページ: 309~309
10.3390/ma14020309
Journal of Physics and Chemistry of Solids
巻: 152 ページ: 109913~109913
10.1016/j.jpcs.2020.109913
Journal of the European Ceramic Society
巻: 40 ページ: 5410~5422
10.1016/j.jeurceramsoc.2020.06.047