本研究は、ワイヤ溶融・積層方式の金属3D造形技術(溶融金属積層法)を応用することで、ミリスケールで高強度層(硬質層)と高延性層(軟質層)を複合化した、高強度・高延性 を兼備する複合鉄鋼材の概念を提唱し、その機械的特性の明確化を目的とした検討を行ったものである。以下に本研究で得られた成果を示す。 1. 高強度材料としてマルテンサイト系ステンレス鋼を、高延性材料としてオーステナイト系ステンレス鋼を用いた複合鉄鋼材料を製作した。2. 各層の組織状態、元素分布を光学顕微鏡、走査型電子顕微鏡、EPMAにより評価した結果、各層の造形時に前層を溶融することによる希釈は生じるものの、各層で組織状態、元素分布は明確に異なることがわかった。3. 各層の硬さを評価した結果、高強度層の硬さは高延性層の硬さの約2倍の硬さとなっており、ミリスケールで強度特性が分布した造形物を製作可能であることがわかった。4. 複合鉄鋼材料の強度特性を評価した結果、均質材料とは異なる特性を示すことがわかった。さらにその特性は、高強度層と高延性層の分率により制御できることがわかった。 以上の成果により、ワイヤ溶融・積層方式の金属3D造形技術を用いることで、形状に加えて強度特性をもデザインした3次元構造物の製作の可能性を示すことができた。本研究で明らかにされた複合鉄鋼材をベースとして、今後は、ワイヤ溶融・積層方式の金属3D造形による軽量かつ高強度、高延性な造形物の製作技術へと展開されることが期待される。
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