研究実績の概要 |
選択的レーザ溶融法(Selective Laser Melting, SLM)は、高出力レーザを用いて金属粉末の層を選択的に溶融・凝固させ、積層を繰り返すことで任意形状の三次元部材を造形する。レーザ照射条件(出力や走査速度、走査パターン)を変えることでプロセス中の熱履歴が変わり、それが造形材の微細組織の大きさや形態に大きく影響する。したがって、材料内部の温度計測技術が求められている。 本研究では、材料内を伝搬する超音波の温度依存性に着目し、超音波によるSLMプロセス中の温度場モニタリングを試みた。SLM装置の基材下部にセンサーを設置し、実際に超音波伝播挙動を計測したところ、レーザ照射によって造形サンプルと金属基材が加熱されることで音速場が変化し、結果としてパルス波の伝搬時間の周期的な遅れが明確に観察された。この結果は、有限要素法を用いた熱解析と超音波伝播解析を連成シミュレーションの結果とも一致していた。一方で、パルス波の伝搬時間は、造形プロセス中の積層サンプルが高くなるにつれて超音波伝播距離が長くなることでも遅れが生じた。 これらの結果から、超音波伝播遅れから温度場を推定する数式を導出することで、簡便な方法で逆解析を実現した。これにより、SLMプロセス中の限られた時間内であっても材料内部の温度場計測が可能である。材料温度場を変えてニッケル基合金のSLM造形を実施したところ、材料の保持温度が高くなることで冷却速度が低下し、微細なセル構造が粗大化した。また、結晶粒の粗大化も観察された。超音波温度モニタリングによって造形プロセスの温度場を把握し、レーザ照射条件を制御することで、微細組織を制御可能であることが示された。
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