金属材料において塑性変形と化学反応が相互作用し生じる応力腐食割れや孔食は低荷重での予期せぬ事故につながりうるため、腐食メカニズムの理解を通じた安全管理が求められ腐食メカニズムの理解を通じた安全管理が求められる。本研究課題では金属材料の応力腐食割れといった現象を解析対象として、ReaxFFの化学反応力場かつ変形場のもとで転位・不整合界面・多結晶粒界および酸化被膜といった金属材料の欠陥付近での原子論的振る舞いを解析可能なモデリング手法および解析手法の構築に取り組んだ。モデリングに関する取り組みとして、百ナノメートルサイズの微細な結晶粒を定量的に再現した多結晶粒界のモデリングのため1億原子以上のサイズのモデルを構築可能な計算環境を整備した。また高温高圧水環境において金属表面において厚さ1~2ナノメートル程度の酸化被膜をモデリングする手法を獲得した。解析手法として、粒界といった材料欠陥を再現した超大規模モデルを対象として大容量メモリを扱いつつ高速で解析可能なシミュレータを作成した。また鉄・ニッケル・クロム合金といった合金元素と水素・酸素といった元素との化学反応を再現可能な多体原子間のReaxFFパラメータを作成した。これらのモデリング手法およびシミュレータを用いて、多結晶チタンにおける応力腐食割れ現象を解析した結果、表面の酸化被膜と内部金属と粒界面の境界より割れが発生することで粒界割れを引き起こすことを明らかにした。またFeNiCr合金における応力腐食割れ現象を解析した結果、表面の酸化に伴い発生した水素が粒界に沿って合金内部に侵入することで粒界付近での局所的な相変態を伴う塑性変形が生じることを明らかにした。
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