研究課題/領域番号 |
19K15319
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研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
梶川 翔平 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 准教授 (00772815)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 木質系材料 / マルチスケール有限要素解析 / 降伏曲面 / 大変形加工 |
研究実績の概要 |
本研究では,有限要素法(FEM)解析によって木材の変形加工を再現できるようにするため,マルチスケールFEM解析の活用による直交異方性パラメータや降伏条件の取得方法を提案する.マルチスケールFEM解析の活用によって,実験的に取得することが難しい直交異方性パラメータ取得の簡易化や,降伏挙動の調査を行うことができる. 2020年度は,木材の降伏挙動に関する調査として,2019年度に構築した木材のマルチスケールFEM解析モデルを用いた仮想材料試験を行い,針葉樹材の空隙率が降伏応力と静水圧応力の関係に及ぼす影響を調査するとともに,円形のボイドを有する材料の場合と比較した.また,現状の問題点を明確化するため,成形加工法の1つである押出し加工を汎用のFEM解析ソフトウェアを用いて解析し,実験結果と比較した.さらに,実際の木材の変形および破壊の挙動について検討するため,木材の曲げ試験を実施し,その際の応力分布をFEM解析によって調査した. マルチスケールFEM解析モデルを用いた仮想材料試験においては,降伏応力に及ぼす静水圧応力の影響は空隙率によって変化し,静水圧応力が低い場合において針葉樹材は円形のボイド有する材と異なる挙動を示すことがわかった.汎用のFEM解析ソフトウェアを用いた押出し加工解析においては,材料はミーゼスの降伏条件に従うとして応力-ひずみ線図を調整した結果,圧密以降の荷重変化はおおよそ再現できた.一方で,圧密までの挙動や,加工中の応力・ひずみ分布は再現できず,降伏条件式の修正や,破壊条件の導入が必要であることが明確化された.通常の角材や,複雑な形状を有する接合材の曲げ試験を行い,木材の変形および破壊挙動について検討を行った結果,引張力が原因となって破壊する場合に比べ,せん断力が原因となる場合は破壊強度が大きく低下することが確認された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
解析モデルの構築が進み,基礎的な知見を蓄えることができているものの,新型コロナウイルス感染拡大の影響によって当初予定していた引張試験や圧縮試験などの実験を十分に推進することができず,マルチスケールFEM解析による仮想材料試験結果の妥当性を十分に検証することができなかった.上記の理由のため,やや遅れていると判断する.
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今後の研究の推進方策 |
2020年度に実施予定であった実験を推進し,マルチスケールFEM解析結果と実験結果を比較することによって,提案手法の妥当性を検証する.引張試験や圧縮試験などは,2年目までに準備してきた設備を用いて実施する.外部の研究機関が保有する試験装置も活用して小型の木材試験片の物性試験も実施し,木材の組織構造と変形特性の関係性について,より詳細な検討を加える.最終的に,提案手法によって取得した材料特性を導入したモデルにて変形加工解析を実施し,実験結果と比較することによって,本手法の有効性を検証する.2019年度および2020年度は,研究室の学生3名の協力を得ていたが,2021年度はさらに1名増やし,4名の学生の協力を得て研究を推進する.
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染拡大のため,予定していた学会発表はすべて中止もしくはオンライン開催となったほか,提携先に出張して実験や打ち合わせを実施することができず,2020年度の旅費使用は0円であった.このため,次年度使用額が生じた.2021年度後半にはワクチン接種によって感染状況が改善していると想定し,当該助成金は今年度実施できなかった提携先での実験を行うための旅費として使用する.
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