2022年度は木材の微小変形および大変形を再現できるようにするため,2種類のモデルを用いた解析を実施した.実験結果と比較することによって,モデルの妥当性を検証した.主な実績は以下の通りである. (1) 木材の微小変形挙動を再現するため,昨年度から引き続き,木材の年輪,細胞構造を模擬したミクロスケールのモデルを用いて,均質化法に基づくFEM解析を実施した.解析にて,年輪の幅や細胞形状がヤング率や降伏応力に及ぼす影響を系統的に調査した.解析結果の妥当性を検証するため,スギ,ヒノキ,カラマツおよびベイマツといった細胞形状が異なる複数の樹種を用いて,圧縮試験を行い,それぞれの細胞形状を模擬したモデルを用いた解析結果と比較した.その結果,いずれの樹種を用いた場合についても,圧縮時における木材の年輪傾角がヤング率に及ぼす影響に関して,実験と解析における傾向が定性的に一致した. (2) 木材の大変形挙動を再現するため,木材の年輪,細胞構造を簡易的に再現したマクロスケールのモデルを作成し,FEMおよび離散要素法 (DEM)による連成解析を実施した.木材の圧縮挙動に関して,解析結果を実験結果と比較した結果,空隙構造を導入したモデルを用いた場合に,実際の変形挙動を再現することができた.圧縮方向に対する木材の年輪傾角を変化させた場合も,年輪傾角による変形挙動の変化も再現できた.一方で,解析モデルにて実際の木材の空隙率を再現することが難しかったため,圧密が完了する領域まで変形が進むと,解析と実験のずれが大きくなる傾向を示した.木材の細胞構造をより緻密に再現したモデルを作成し,実際の木材の空隙率に近づける必要があると考えられる.
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