研究課題/領域番号 |
19K15322
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研究機関 | 豊橋技術科学大学 |
研究代表者 |
足立 望 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (00758724)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | チタン / 相変態 / 高圧相 |
研究実績の概要 |
申請者は,純Tiおよび純Zrにおいて、高圧下せん断加工を加えることで、高圧ω相や高圧β相を常温常圧下において安定化させることに成功した。これら高圧相は、結晶構造から高い強度や延性を持つ可能性があり、高圧相を有効利用した新たな組織制御が実現する可能性がある。本研究では、添加元素が高圧相安定化に及ぼす影響を明らかにし,高圧相による組織制御を実現するための指導原理を構築を目的として研究を行った。
純Tiの高圧ω相変態に及ぼす添加元素の影響を明らかにするために、精錬過程で不可避的に混入する 酸素および鉄元素に着目した。低酸素材では、ほぼ100vol%のω相割合を示したが、酸素量増大に伴って安定化するω相割合は大きく減少した。これは、酸素がα相安定化元素であることに起因している。一方、鉄元素については、athermal ωやisothermal ωの形成を促進する元素であるが、高圧下せん断加工により形成するω相割合に大きな影響は与えないことが明らかになった。これは熱的に形成するω相と機械的に形成するω相に及ぼす添加元素の影響が異なることを示唆しており、今後より詳細に調査する。
高圧下せん断加工により形成したω相の熱的な安定性を調査した結果、酸素の添加により、ω相の熱的安定性が大きく向上することが分かった。鉄元素は、熱的安定性にも大きな影響を与えなかった。これらの結果は、理論計算結果とよく一致しており、本研究によって初めて実験的に高圧ω相の安定性に及ぼす元素添加の影響が調査できたといえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
添加元素として酸素および鉄を選択し、上述の通り、当初計画であった高圧相安定化に及ぼす圧力因子や機械的因子および元素添加による高圧相の安定度の評価を順調に進めることができた。従って、本研究は順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
本研究を進展させる上で、高圧相の安定化に及ぼす添加元素の影響を、熱力学計算結果と対比しながら議論することは非常に重要であるが、また計算結果を得ていないのが現状である。次年度は、計算結果との対比に注力して研究を進める。 また、当初計画である、高圧相の安定化に寄与する格子欠陥の影響についても実験を進める。
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