数値シミュレーション技術とインプロセスモニタリング技術の融合により、溶接プロセスの物理に基づいたプリポストプロセスフリーな「品質保証型溶接システム」の構築を目的として研究を実施した。 令和3年度においては、これまでに構築を行った溶接プロセスにおけるアークプラズマおよび溶融電極ワイヤの挙動を可視化する溶接熱源シミュレーションモデルと溶接部における溶込みの形成過程を可視化する溶融池シミュレーションモデルの統合化により、プロセスのインプットである溶接プロセス条件とアウトプットである溶込み形状の関係性に対して、溶接プロセス中の現象が及ぼす影響とその支配因子について詳細に考察した。その結果として、溶融池表面に落下する溶融電極ワイヤの速度および温度といった特性が溶込みの深さに対して強く影響を及ぼし、一方でアークプラズマの入熱分布などといった特性は溶込みの幅に対して強く影響を及ぼしていることが明らかとなった。これらを統合化したシミュレーションモデルにおいては、溶接電流のような溶接プロセス条件が変化してもその結果である溶込みの形状を精度よく予測することができ、妥当性のあるものであると考えられる。 研究期間全体の成果を総括すると、数値シミュレーション技術により溶接プロセスにおける熱源・溶込み形成現象について考察し、溶接プロセス条件と溶接結果ならびにプロセス中に観察される溶融部外観の関係性について明らかにした。また、溶接プロセス中に明瞭に溶融部を観察する手法を構築し、シミュレーション技術によって示されたプロセス中の状況と溶接結果の関係性に基づいたインプロセスモニタリング技術としてまとめた。以上より、溶接プロセス中の現象の物理に基づいたプリポストプロセスフリーな「品質保証型溶接システム」に必要な一連の技術の構築を達成した。
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