研究課題
本研究では、直径100mm・幅3mmの Al-2wt%Fe合金に3 GPaの高圧下で高圧ねじり(HPT)加工を施し、均一ひずみが導入されたリング状試料の作製を試みた。その結果、通常鉄はアルミニウム中に0.05wt%しか固溶しないものの、わずか1回転で1wt%を過飽和に固溶させることができた。その後、温度473 Kで時効することで時効硬化を生じ、引張強度は最大で730 MPaとなった。結晶粒はHPT加工の回転数の増加とともに微細化され、1回転後では170 nmへ超微細化できた。組織解析は高輝度X線を用いたその場観察法も取り入れて進めた。時効中の析出状態や転位密度変化をその場解析することで、作製した超微細粒組織は良好な熱安定性を有することが分かった。4探針法による電気抵抗測定の結果、0.25回転材は53 IACS%の高導電性を保持しつつ引張強度320 MPaとなった。時効後は360 MPaへ向上し導電性もさらに改善し、強度・導電性の同時向上が達成できた。わずか0.25回転でも特性改善が図れることから、本研究ではワイヤー状試料の連続加工法についても開発を行った。連続加工法は従来のContinuous HPT法をもとに、新たに金型に試料挿入口・取出口を設け、直径3 mmのワイヤー状試料を2本同時に加工できるよう改良を施した。その結果、0.25回転施すことで相当ひずみ25の巨大ひずみが導入でき、結晶粒の超微細化が可能となった。また線材の繰り返し曲げ試験による疲労特性評価の設備を整え、実用的観点からの評価も可能となった。
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