研究課題/領域番号 |
19K15327
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
松林 康仁 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 研究員 (20835938)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | エアロゾルデポジション / 発光分光 |
研究実績の概要 |
耐摩耗、電池材料など幅広い応用研究がなされているセラミックコーティング手法、エアロゾルデポジション法(AD法)における微粒子衝突時のその場温度圧力測定に取り組んでいる。微粒子衝突時の温度は有限要素法のシミュレーションで、500 ℃、10 GPa以下程度の温度圧力となることが示されているが、その温度圧力環境はいまだ実験的には明らかにされていない。AD法の製膜機構の解明のためにも、微粒子の基板衝突時、運動エネルギーがどのように熱と歪エネルギーに変換されるか調べることは不可欠である。 本研究では分光測定によって温度圧力測定を試みており、2019年度に導入した分光のセットアップを用いて、AD製膜中の発光現象を捉えた。窒素回転温度からガス温度が室温程度であり、AD製膜は微粒子の溶融を伴わない製膜であることを支持する結果が得られた。また、発光強度がエアロゾルの運動エネルギーのフラックスに比例することを見出した。運動エネルギーが微粒子の破砕に伴う表面エネルギーの増加に変換されていると考えれば、この発光は破砕による電荷分離で生じた強い電場による放電、すなわちフラクトエミッションに由来すると考えられる。本研究の実験系はAD法の製膜の素過程解明に有用であるだけでなく、微粒子衝突による放電というを詳細に理解するための新たなプラットフォームとなりうる。X線回折による基板及び膜の残留応力測定にも成功している。今後蛍光体を用いた分光による圧力測定を行ない、膜の物性との関連を調べる予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では最終的に蛍光体によるAD法のその場温度圧力測定に取り組む予定である。AD中発光の分光測定からガス温度の推定や発光の起源特定にも成功している。また、X線回折によるAD膜の残留応力測定にも成功しており、本研究はおおむね順調に遂行できていると考える。
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今後の研究の推進方策 |
AD法製膜時の発光についてその発光の起源について明らかにした。また、X線回折による残留応力の測定にも成功している。しかし実際の製膜中の圧力はいまだ測定されたことはなく、今後蛍光体による分光測定に試みる。分光のセットアップはおおむね完成しており、蛍光体分光を行えるよう修正することで比較的早く実施できると考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
小型分光器を購入予定であったが、共同研究者より借りることができた。その購入予定額を用いて、お借りした分光器により定量的な解析を行うための標準光源を購入した。その残額が次年度使用額であり、今後進める蛍光体分光測定のセットアップのための光学フィルターや治具などの購入のために使用予定である。
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