研究実績の概要 |
本研究ではめっき法とアノード酸化法という簡便な湿式表面処理の組み合わせによる多孔質酸化物電極の作製を目的とする。本手法では,蜂の巣状の単一的な多孔質構造を自己組織的に生成できるため,一般的な作製過程における粒子の凝集や多孔質構造の複雑化を抑制することにより,電極の比表面積を効率的に向上させることが期待できる。 本研究課題では,特に酸素還元・酸素発生反応(ORR/OER)用電極への応用を目指して,めっき法によるアノード酸化基材表面の組成制御を介した触媒活性な多孔質アノード酸化膜の形成法の確立,および多孔質構造を変化させた際の電極の有効表面積の変化と活性への影響を明らかにする。 本年度では,様々な鉄系合金めっきのアノード酸化によって,ORR,及びOERに活性な酸化物からなる多孔質膜の形成を試みた。水溶液中でFe-M(M=Mn,Ni,Co)合金めっき膜を作製した後,これをアノード酸化,及びポスト熱処理することで,直径80nm以下のポアを有するスピネルフェライト(MxFe3-xO4)多孔質膜を作製できた。またスピネルフェライトの添加元素Mの割合は,Fe-Mめっきの合金組成を変えることである程度制御が可能であった。回転リングディスク電極を用いて,これらのORR及びOER活性を評価したところ,ORRについてはMnxFe3-xO4多孔質膜が,OERについてはNixFe3-xO4多孔質膜が,最も低い過電圧を示し,添加元素Mの選択によって電極触媒活性を向上できることが分かった。またORRの分極曲線の挙動などから,多孔質膜のポア構造が,おそらくポア内部への酸素の拡散に寄与し,電極の活性に影響を与えている可能性が示唆された。
|