研究課題/領域番号 |
19K15338
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
菅 恵嗣 東北大学, 工学研究科, 准教授 (00709800)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | Cubosome / ゲル粒子 / 疎水性薬剤分子 / Hydrocortisone / 膜特性 |
研究実績の概要 |
令和2年度は、前年度に調製条件を明らかにしたCubosomeゲル各種について、1)ゲル微粒子を水中で安定に分散させるための手法開発、2)ゲスト分子である疎水性薬剤分子の保持効率の評価、3)機能性金属ナノ粒子の複合化について検討を行った。 1)CubosomeゲルにPluronic F127を添加して分散させたとしても、膜特性(脂質パッキング密度、表面親水性)はそれほど変化しないことがわかった。F127濃度を8 wt%にすることで、pH 7.4でも安定に集合体を維持することを明らかにした。 2)組成を最適化したCubosomeに疎水性薬剤分子であるHydrocortisoneを添加した。一般的なリン脂質ベシクルでは担持量が10wt%で飽和となるのに対して、Cubosomeでは最大20wt%まで薬剤分子を担持可能である。Cubosome骨格は部分的にdisordered領域を有するため、膜の間隙部分に薬剤分子が挿入されると考えられる。 3)高感度ラマン解析を目的として、Cubosome内水相を金ナノ粒子に置き換えたMetaro-Cubosomeの開発に取り組んだ。粒径5nmのAuNPを担持したCubosome調製に成功しており、本研究の最終年度にて、これらサンプルを駆使してCubosome膜状に配向した分子について表面増強ラマンによる解析を行う。 本研究に関する研究業績として、依頼講演1件(生物工学会)、国際会議口頭発表1件(AIChE 2020)、国内シンポジウムポスター発表2件(化学工学会、日本膜学会)を行った。得られた研究成果に関して、投稿論文2報を執筆中である。また、自己組織化膜に関する論文を7報発表している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度では、ターゲット分子を疎水性薬剤分子として、Cubosomeへの担持方法の最適化および担持効率について検討した。Hydrocortisoneをモデル薬剤として、異なる担持量(0-20 wt%)でCubosomeを調製したところ、いずれの担持量においても分散性の高いCubosomeを作成することができた。膜特性を解析したところ、脂質パッキング密度はgel相と液晶(disordered)相の中間的な値を示し、脂質から成るCubosome骨格は部分的に疎な部分があることを明らかにした。また、ゲル状巨大集合体と粒子状構造を制御するためには、骨格成分であるモノオレイン/オレイン酸の混合比を調製することが重要である。Cubosome内部の水チャネル構造を確かめるため、本年度は金ナノ粒子を用いた。粒径5nmの金ナノ粒子を用いたところ、良好にCubosomeを調製できたことから、集合体内部には5nm程度の水チャネルが形成されていることが示唆された。Cubosomeの構造的特性については。次年度にてCryo-TEMやSAXS測定を実施する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
継続してCubosomalゲル集合体の特性解析手法について研究を行う。今後の予定として、Cryo-TEMもしくはSAXSによるCubosome構造解析を行う。1年目および2年目にて調製条件を明らかにしたCubosome各種について、微細構造(膜厚、構造(FCC, etc.))を解析する。脂質分子集合体は温度、pH、脂質濃度に依存するため、網羅的に測定を行い、集合体の相挙動を体系的にまとめる。3年目後半では、Cubosomeの分子認識能について重点的に検討を行う。具体的には、分子認識性リガンドであるSteryl Guanidiniumを導入し、リン酸側鎖を持つ分子(核酸)の認識能力について評価する。並行して、キラル分離を目標として、モデル分子であるアミノ酸(Trp、Phe、etc.)の吸着分離能を評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年4月に現所属(東北大学)へ異動となり、さらにコロナ禍による部局閉鎖の影響を受けて実験計画(試薬・備品の調達等)を変更せざるを得なかった。なお、当該研究に関しては旧所属(大阪大学)と連携して遂行しているため、研究そのものは概ね予定通りに進んでいる。また、参加を予定していた国際会議や国内シンポジウムが中止となり、旅費が発生しなかったため、次年度使用額が生じた。
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