• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2019 年度 実施状況報告書

スラリーの乾燥により得られる多孔質膜構造の形成過程に関する研究

研究課題

研究課題/領域番号 19K15343
研究機関九州大学

研究代表者

弘中 秀至  九州大学, 工学研究院, 助教 (90804659)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2022-03-31
キーワード多孔質膜 / ウェットプロセス / 細孔径分布 / 構造評価 / 多孔質体構造
研究実績の概要

本研究は,湿式プロセスにおける機能性多孔質膜の成膜を前提として,膜の多孔質構造の形成過程を解明するために実施している.具体的には,同じ材料に対して成膜条件を変更した場合の多孔質膜の特性を検討している.今年度の成果として,成膜条件に対する多孔質構造の傾向を示す例として,膜厚に対して最大細孔径が小さくなるという結果を得た.最大細孔径は膜の多孔質構造の特性を反映する指標となりうる.本研究では,多孔質膜として固体高分子型燃料電池の触媒層を想定しているため,カーボンブラックとナフィオンをノルマルプロパノールに分散させたスラリーを用いた.このスラリーをドクターブレード法によってガス拡散層(基板)の上に塗布・乾燥させることで,カーボンブラックの多孔質膜を作製した.ドクターブレードと基板の間隔を変更することで, 膜厚の異なる多孔質膜を作製した.得られた多孔質膜の細孔径分布をガスフロー法によって評価した結果,膜厚に対して最大細孔径は小さくなるという結果が得られた.最大細孔径や細孔径分布に着目することで,SEMや光学顕微鏡による画像などでは膜の評価が困難な場合でも,多孔質構造に起因する膜の性質を定量的に評価できた.研究計画時は基板としてPTFE膜を想定していたが,多孔質膜にき裂を生じたため,基板をガス拡散層へ変更した.研究計画時は,乾燥後の膜の多孔質構造に影響を及ぼす主な因子として乾燥速度を想定していたが,細孔径分布を評価した結果,膜厚(ドクターブレードと基板の間隔)も膜の多孔質構造に影響を与える可能性が示された.このことから,今後は計画時の想定よりも多くの成膜条件で実験を行う必要があると考える.現在,得られた結果の再現性を確認するとともに,他のパラメータ(ドクターブレードの移動速度やナフィオンとカーボンブラックの比など)を変更した成膜実験を行っている.2年度目以降は,これらのパラメータと膜の多孔質構造の関係を検証していく予定である.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

膜厚を小さくすることで,最大細孔径の大きな膜が得られた.さまざまな成膜条件を検討するために本来の計画で2年目以降に実施すべきであった基板の影響やその他の影響を検討したので,進捗状況としてはおおむね良好に進捗しているとする.しかしながら,当初想定は想定していなかった,膜厚が細孔径分布に及ぼす機構を明らかにする必要が出てきた.成膜プロセス全体に対して成膜後の膜構造に影響を与えうる要因を整理した結果,当初想定していた基板および乾燥速度という因子以外にも,スラリー中の粒子の分散状況および微小気泡の有無,乾燥方法などの他の影響を改めて検討することとした.そこで,本研究期間においては数値解析のモデル化の代わりに,成膜条件の他の要因と成膜後の多孔質膜の性質の関係に着目した実証実験を行うこととした.現在,実験データのばらつきを考慮しつつ,膜厚に対する細孔径分布の形状の違いが有意なものであることを確認中である.さらに実験条件を変化させて細孔径分布と膜厚の関係を検討する.具体的には,膜厚もしくはせん断速度をさらに大きくした場合の細孔径分布を検証する.より低粒子濃度のスラリーの成膜実験を行う.膜厚に対して細孔径分布が異なる原因としては,せん断のかかっている液膜中における粒子の配置状態が異なるため,乾燥後の構造が異なり,細孔径分布に違いが生じた可能性が考えられる.この仮定が妥当であれば,低粒子濃度のスラリーでは粒子の配置状況はせん断速度に依存せず,せん断速度に対してほぼ同様な細孔径分布が得られると期待される.このような実験でも細孔径分布に違いが認められない場合,同一濃度で単純な形状の粒子(シリカなど)を用いた成膜実験を行うことも想定している.

今後の研究の推進方策

研究計画時は多孔質体構造と成膜条件の関係を数値解析により検証する予定であったが,実験的に検証することとした.数値解析で多孔質膜の成膜過程を再現するためには成膜プロセスの種々の要因のうち,モデル化すべき因子を特定すべきである.本研究では,数値解析におけるモデル化で考慮すべき因子を実験的に検証する.現在,せん断速度と細孔径分布の関係の再現性を確認中である.今後はSEMによる断面の確認を行いつつ,細孔径分布が異なる原因を検討する.さらにスラリー中の粒子の分散条件や乾燥条件など,他の因子と成膜後の多孔質体構造の関係に関しても検討を行う.

次年度使用額が生じた理由

研究を遂行するために予算を効果的利用するという観点から,余剰の交付金額は次年度の助成金と合わせて, 試薬の購入に充てることが有意義と判断した.今年度の余剰金は,次年度に使用する試薬代の一部とする予定である.

URL: 

公開日: 2021-01-27  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi