研究課題/領域番号 |
19K15355
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
藪下 瑞帆 東北大学, 多元物質科学研究所, 助教 (00835142)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 炭素材料 / 窒素ドープ炭素 / 反応場 / 吸着 / バイオマス / 金属有機構造体 / ホルモース反応 |
研究実績の概要 |
本年度は、(1)触媒として用いる窒素ドープ炭素の調製とそのホルモース反応への展開を行うと同時に、(2)糖化合物をはじめとする複数の有機化合物が共存する水溶液中における、糖化合物の固体表面への吸着過程についての検証を行った。 (1)については、ホルモース反応において触媒活性点として機能し得る塩基性サイト(含窒素官能基)を炭素材料中に多量に構築することを志向し、既報に従って、不活性雰囲気下でのポルフィリンの炭化を行った。このようにして調製した窒素ドープ炭素を用いて、キシロースおよびホルムアルデヒド共存下にてホルモース反応を試みたが、キシロース、ホルムアルデヒドともにほとんど転換しなかった。この原因は、含窒素官能基の塩基性が弱すぎるために、両基質をうまく活性化できていないためだと考えられる。 (2)については、吸着剤を可能な限り単純化して吸着過程の理解を容易にするために、アモルファス材料である窒素ドープ炭素ではなく、芳香族ドメインを有する結晶性固体である金属有機構造体(MOF)・NU-1000をモデルに用いた吸着過程の検証を行った。その結果、0.4 vol%の濃度の有機化合物共存下では、NU-1000上への糖化合物の吸着が阻害されないのに対し、10-20 vol%以上の濃度になると、糖化合物の吸着が著しく阻害されることが分かった。したがって、ホルモース反応系の条件設定においては、ホルムアルデヒド濃度を緻密にコントロールしなければ、炭素材料表面を反応場として効率よく利用できないことが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初研究計画では、窒素ドープ炭素中の含窒素官能基を活性点として、芳香族ドメインを吸着サイトならびに反応場として用いることを想定していた。しかし、含窒素官能基の塩基性が弱すぎるためか、ホルモース反応が進行しないことが分かった。一方で、金属有機構造体・NU-1000を用いたモデル実験より、複数の有機化合物存在下における糖化合物の吸着過程についての知見を得ることができた。本知見は、今後のホルモース反応の条件設定において有用であり、次年度以降の研究の遂行に役立つものと確信している。以上を踏まえ、現在までの進捗状況は「おおむね順調に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
上述の通り、ホルモース反応の促進のためには、含窒素官能基のような弱塩基性の化学種ではなく、強塩基性の化学種が必要であると考えられる。このことから、炭素表面に強塩基性を示す金属酸化物ナノ粒子(例:CaOやMgO)を担持することを計画している。こうすることで、炭素材料に吸着した基質が表面に拡散し、金属酸化物ナノ粒子で活性化されるものと想定している。すなわち、炭素材料表面を反応場とする初期コンセプトはそのままに、効率良くホルモース反応を進行させることのできる触媒系構築が期待される。 あわせて、実際の触媒材料を用いた、キシロースならびにホルムアルデヒドの吸着実験を並行して実施して、各有機化合物の吸着過程、あるいは競争吸着過程についての知見収集に務める。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初、2020年3月末に開催予定であった第125回触媒討論会等への旅費として使用する予定であったが、新型コロナウィルス感染症の影響による学会中止ならびに所属機関からの出張自粛要請を受け、当該予算を執行することができなかった。そのため、当該予算を次年度繰り越しとし、消耗品あるいは成果発表のための旅費として適切かつ効率の良い研究予算の執行に務める。
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