研究実績の概要 |
昨年度に引き続き、窒素ドープカーボン触媒における活性点のピリジン型窒素が、酸素還元反応において果たす役割をモデル触媒を用いて明らかにした。ピリジン型窒素(pyri-N)は、酸性環境下では酸・塩基平衡に従ってピリジニウム(pyri-NH+)として存在している。硫酸水溶液中で、酸素分子を導入しながら窒素ドープカーボンモデル触媒に電位を印加していくと、下式のように熱的な酸素吸着と電気化学的な還元反応が同時に起きることが、X線光電子分光と第一原理計算を組み合わせたアプローチによって明らかになった。 pyri-NH+ + e- + O2 → pyri-NH + O2(吸着) この反応の酸化還元電位はpyri-NH+の安定性とも密接に関係しており、疎水的な環境であるほど進行しやすいことも分かった。つまり、π*軌道への電子注入によるpyri-NHの生成が酸素分子吸着と協調して進行し、さらに疎水的な環境で促進されるということである。本成果は、2021年1月付で、Angew. Chem. Int. Ed. 60, 5121 (2021)にHot paperとして掲載されている。この設計指針に基づいて、実際に疎水性を強化した窒素ドープグラフェン触媒の合成を行った。この触媒では、酸化グラフェンとNaCl微結晶を混合し、籠状構造を導入した。この触媒の活性を調べたところ、メタルフリー触媒としては最高レベルの性能を持つことを示した。酸素分圧を変化させた際の活性を測定し、反応モデルに基づいた解析から、籠形状が酸素分子をトラップし、反応律速段階を変化させながら活性を高めていることを明らかにした。
|