研究課題/領域番号 |
19K15358
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
服部 真史 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 特任助教 (10713539)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | CaFH固溶体 / 低温アンモニア合成 |
研究実績の概要 |
本研究における目的生成物質(フッ化バリウムもしくは窒化バリウム中に形成した水素化バリウム)を形成する手法として、フッ化バリウムもしくは窒化バリウムと水素化カルシウムを混合し、水素雰囲気下で反応させる手法に着目し、フッ化バリウムと水素化バリウムの混合化合物(BaF2-BaH2)を形成することに成功した。さらにこのとき、フッ化カルシウム-水素化カルシウム固溶体(CaFH)が副生することを確認した。 このCaFH固溶体とBaF2-BaH2の混合物質にRu微粒子を担持した触媒(Ru/CaFH)は300℃以上の反応温度において、これまで報告されているアンモニア合成触媒の中で最高の活性を示すだけでなく、アンモニア合成固体触媒では報告例のない、100℃以下の低温でもアンモニア合成活性を示した。 密度汎関数理論計算(DFT計算)の結果やRu担持CaFHおよびBaF2-BaH2の水素脱離温度の実測などから、CaFHが水素時に高い電子供与能を示し、かつ50℃程度の低温から水素を脱離することが判明した。これらの結果から、Ru/CaFHにおける高い触媒アンモニア合成活性および低温でのアンモニア合成には、当初想定していたBaF2-BaH2からの低温における電子供与ではなく、副生したCaFH固溶体における低温での電子供与が主に寄与することが判明した。 本研究における成果を元にNature Communicationにおいて報告を行った(DOI:10.1038/s41467-020-15868-8)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究における最大の目標として、固体触媒による低温でのアンモニア合成があげられる。先の実績概要にも述べたように、本研究では100℃以下の低温で動作するアンモニア合成触媒を開発しており、目標については十分に達成されていると考えられる。 さらに、当初予定した材料(フッ化バリウムもしくは窒化バリウム中に形成した水素化バリウム)の合成中に副生された、フッ化カルシウム-水素化カルシウム固溶体に着目することにより、当初予定より優れた材料を見出したという点で、現段階で当初の計画より研究は進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
先の研究実績の概要において記述したRu/CaFH触媒において、主に機能する部位はRuが担持したCaFH固溶体の部分となる。一方で当該触媒の表面分析から、CaFHの形成箇所は限定的であり、従って当該触媒は、現段階でも優れた触媒ではあるが、その機能を十分に発現していない可能性がある。 今後の研究においては、触媒調製法および材料を選定することで上記問題点の解決に取り組む。具体的には、フッ化バリウムおよび水素化カルシムの微粒子化手法の模索を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究における成果は簡便に模倣かつ応用することが可能であるため、対外的に発表することへの懸念から学会発表を差し控えたためによる余剰分および研究計画の順調な消化により、装置類の増設を抑えることが出来たために当該助成金が生じた。 また、当該助成金については次年度において、当初の予定より進んだ研究を行うため、この研究の推進のために必要な装置類の購入費用に充てる計画である。
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