本申請研究では、酸化、窒化、フッ化バリウム(BaO、Ba3N2、BaF2)中に形成した水素化バリウム(BaH2)からの低温度水素脱離に伴う強い電子供与能の発現に着目し、それらの性質を利用した従来の固体アンモニア合成触媒では不可能であった低温度で効率的に動作する固体アンモニア合成触媒の開発を目的とした。 初年度では、BaF2と水素化カルシウム(CaH2)を反応させて調製したフッ化水素化カルシウム(CaFH)にルテニウム粒子を担持した触媒(Ru/CaFH)において、これまで報告された固体触媒では不可能であった、低温(<100 ○C)でアンモニア合成が可能であることを発見した。 最終年度では、このCaFHやBaOに形成したBaH2(BaO-BaH2)をはじめとする、水素化物電子供与体と貴金属であるルテニウム以外の遷移金属を組み合わせた触媒の模索を行った。結果、硝酸バリウムを担持した酸化鉄(Fe2O3)をCaH2で還元した、BaO-BaH2とFe粒子が組み合わさった触媒(Fe/ BaO-BaH2)が、現状工業的に用いられるアンモニア合成鉄触媒に比べて、高い活性を示し、さらに工業用鉄触媒が動作しない温度(<200 ○C)で動作することを見出した。 Ru/CaFH触媒については初年度で論文として発表を行い、Fe/ BaO-BaH2触媒については、論文での発表を今後行う予定である。
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