研究課題/領域番号 |
19K15360
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
片山 祐 山口大学, 大学院創成科学研究科, 助教 (70819284)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 分子表面修飾 / 有機硫黄共重合体 / オペランド赤外分光測定 / メタノール酸化反応 |
研究実績の概要 |
本研究では、反応中間体をとりまく「局所反応場」設計法の確立を目的として、(1)複数の機能を持たせた修飾分子の新規合成と(2)新規触媒上での反応メカニズム解析を試みた。 (1)安価な硫黄とアルケン部位を持つ種々の有機化合物を混合することで、異なる機能を持つ表面修飾分子の合成に成功した。Ptモデル電極上への修飾、さらに電気化学環境下での安定性も確認した。修飾分子中のスルフィド結合長が電極の修飾分子被覆率に影響を及ぼすことも明らかとなった。異なるスルフィド結合長をもつ表面修飾分子を合成することで、既存手法では困難であった正確な修飾分子の表面被覆率の制御に成功した。実際にこれらの電極でアルコール酸化反応を進行させたところ、分子被覆率が20%程度の場合に未修飾Pt電極と比較して高い活性を示すことが明らかとなった。 (2)Ptモデル電極上への分子修飾メカニズムの可視化に成功した。想定どおり、表面修飾分子の硫黄部位がPt表面と化学結合することで、分子修飾がなされていることが明らかとなった。さらに、得られた表面修飾Pt電極にてメタノール酸化反応を行ったところ、電位依存性のある赤外吸収が確認された。これらの吸収は、メタノール酸化反応に伴い生成する反応中間体に帰属され、表面修飾Pt電極上での電気化学反応のオペランド観察に成功した。これらのスペクトルを解析した結果、(1)で確認された優れた活性は、表面修飾分子に含まれる疎水性のベンゼン部位と、反応種であるアルコールのアルキル部位との高い親和性によるものであることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)複数の機能を持たせた修飾分子の新規合成と(2)新規触媒上での反応メカニズム解析に成功しており、研究は順調に進展している。現時点では、疎水性部位を持つ分子が反応種となる電気化学反応(例えばメタノール酸化反応やエタノール酸化反応など)の高活性化に寄与する表面修飾分子の合成に成功しており、現在はその詳細なメカニズムの解明と、さらなる表面修飾分子の最適化を試みている。オペランド赤外分光法によって、メタノール酸化反応の中間体である一酸化炭素吸着種を観察することに成功している。現在、これらのピーク波数や電位依存性などを詳細に解析しており、表面修飾分子と反応種(もしくは反応中間体)との間の相互作用の明確化を試みている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、親水性の分子が反応種となる電気化学反応(例えばアンモニア酸化反応や水分解反応など)の活性に寄与する表面修飾分子の設計・合成を試みる。これにより、活性に優れる触媒が得られるだけでなく、現在までに想定している修飾分子の作用機序をより明確にすることができる。系統的に表面修飾分子を合成し、様々な電気化学反応に適用することで、各機能を持つモノマーを目的反応に合わせて組みかえる 「テーラーメード」な触媒表面設計を実現する。
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