研究課題/領域番号 |
19K15364
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
太田 誠一 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 助教 (40723284)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | アルツハイマー病 / アミロイドベータ / ドラッグデリバリー / ナノ粒子 |
研究実績の概要 |
本研究では、生体による人工物の排除機構を巧みに利用・制御し、アミロイドβ (Aβ)標的化ナノ粒子を用いた新規アルツハイマー病治療法を開発する。ナノ粒子を薬物送達に使用する際には粒子が免疫系に”ゴミ”として認識され貪食されてしまうことが課題であった。本研究ではこれを逆手にとり、アルツハイマー病の原因とされるAβに金ナノ粒子を特異的に結合させ、Aβと共にミクログリア細胞に効率的に除去させることを狙う。 昨年度はまず、金ナノ粒子にAβ標的性を付与するため、Aβ結合性色素であるコンゴーレッド(CR)の粒子表面への修飾を行った。CRはアミロイドに選択的に結合して蛍光を発することから、病理組織学的検査用に臨床でも用いられており、これを粒子表面にリガンドとして搭載することで、金ナノ粒子をAβに対し特異的に結合させることができると期待される。まず、塩化金酸のクエン酸及びタンニン酸による還元で直径6 nmの金ナノ粒子を合成し、金表面とチオールとの反応を利用して3-メルカプトプロピオン酸(MPA)を表面に修飾した。その後、カルボジイミド反応を用いてMPAのカルボキシ基とCRのアミノ基を結合させることで、金ナノ粒子表面にCRを修飾することができた。一方で、修飾率を上げるとCRの疎水性によって粒子が凝集してしまうことが分かった。そこで、MPAと同時に末端チオール化ポリエチレングリコール(PEG)を粒子表面に修飾することで、粒子の分散安定性を向上し、凝集を防ぎつつ高密度にCRを修飾することが出来た。得られた粒子をAβと共にインキュベートし、透過型電子顕微鏡(TEM)で観察した結果、Aβ繊維表面に粒子が集積していることが確認され、CR修飾金ナノ粒子のAβへの結合能が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度の検討で、金ナノ粒子表面へのAβ標的性リガンドの修飾を完了し、さらに得られた粒子のAβへの結合能がTEM観察によって示唆された。そのため、全体としての進捗状況は、おおむね順調であると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、まずCR修飾金ナノ粒子のAβへの結合能について、CR修飾率の影響など、より詳細な検討を行っていく。また、Aβ標的化ナノ粒子にはAβ凝集体を分散させる効果も期待できるため、この点についても検証を行っていく。 さらに、CR修飾金ナノ粒子によるミクログリアのAβ貪食活性の促進を、マウスミクログリア細胞株BV-2を用いて検証する。得られた知見に基づき、CR修飾金ナノ粒子のアルツハイマー病への治療効果をin vivoで実証することを目指す。
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