研究課題/領域番号 |
19K15368
|
研究機関 | 一関工業高等専門学校 |
研究代表者 |
本間 俊将 一関工業高等専門学校, その他部局等, 助教 (20818538)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 酵素燃料電池 / 多段階反応 / 電極修飾 / エネルギー変換 |
研究実績の概要 |
複数の代謝酵素を電極触媒とした多段階反応型の酵素燃料電池は、燃焼を経ずに糖やアルコールを二酸化炭素と水まで酸化でき、それらの持つ膨大な化学エネルギーを直接電気エネルギーに変換できる。本研究の狙いは従来の多段階反応型の酵素燃料電池で問題となる生成物の蓄積を防ぐことであり、最終的にはフロー式燃料電池を試作する予定である。令和元年度は主に多段階反応の構築に取り組み、次のような成果が得られた。 まず、多段階反応の最終反応物となるギ酸を二酸化炭素と水へと分解し電気エネルギーを得る酵素燃料電池を作製した。アノードの触媒には、ギ酸を二酸化炭素と水素イオンへと分解するNAD依存型のギ酸デヒドロゲナーゼを使用した。通常の電極材料では酵素反応で生成するNADHを酸化できなかったが、ポリアニリン/ポリアクリル酸複合膜で電極を修飾した場合には、-0.1Vvs.Ag/AgCl以上の電位で酸化電流が確認できた。酸素を水へと還元するビリルビンオキシダーゼをカソード触媒として二槽式の酵素燃料電池を作製したところ、電極面積1cm2あたり最大7.3μWの出力が得られた。電気化学的評価からカソードの性能が電池の発電能力を決めていることが示唆された。 次に、多段階酵素反応で律速過程になる脱炭酸反応を加速すべく、シュウ酸をギ酸と二酸化炭素に分解するシュウ酸デカルボキシラーゼの大量生産法について検討した。これまで大腸菌を宿主とした発酵生産を試してきたが、現時点ではまだ発現を確認できていない。発現方法や宿主の変更を検討中である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ギ酸を燃料とする酵素燃料電池の作製には成功したが、シュウ酸デカルボキシラーゼの調製は上手くいかず、多段階酵素反応を利用した燃料電池の構築は行えなかった。ギ酸をモデル燃料とした場合も生成物の蓄積を防ぐ除去機構については検討できるため、シュウ酸デカルボキシラーゼの調製を一旦保留し、フロー型燃料電池の構築について準備を進めている。今年度中にフロー型燃料電池の試作に取り掛かる予定だったが、酵素の調製に時間を割いたため、研究の進捗はやや遅れている状態である。
|
今後の研究の推進方策 |
ギ酸をモデル燃料とした酵素燃料電池に的を絞り、生成物である二酸化炭素と水を除去可能なフロー式燃料電池を作製して性能を評価する。今年度作製したギ酸燃料電池の結果からカソードの性能が電池の出力を決めていることが示唆された。そこで、カソードの面積を増大し、電池の出力向上を図る。二酸化炭素と水を透過可能な材質としては、ポリジメチルシロキサンの利用を検討している。 また、シュウ酸デカルボキシラーゼを効率的良く生産する方法や違う多段階酵素反応の利用についても試みる。シュウ酸デカルボキシラーゼは枯草菌由来の酵素であるため、枯草菌を利用した発酵生産を計画している。研究補助員を雇うことで研究を加速する予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
シュウ酸デカルボキシラーゼの発現が確認できなかったため酵素の精製に使用予定だった装置は購入しなかった。宿主の変更により当該装置は必要ないと判断し、研究の遅れを取り戻すため研究補助員の雇用に充てることにした。
|