研究課題
燃焼を経ずに糖やアルコールを二酸化炭素と水まで酸化できればそれらの持つ膨大な化学エネルギーを直接電気エネルギーに変換できる。本研究ではこの多段階反応を実現できる酵素燃料電池の開発に取り組んだ。まず、多段階反応の最終反応物となるギ酸を二酸化炭素と水へと分解するためギ酸デヒドロゲナーゼとビリルビンオキシダーゼを電極触媒とした酵素燃料電池を作製した。最大出力は電極面積1cm2あたり7.3μWであり、電気化学的な評価から出力はカソードの性能に依存していることがわかった。次に、シュウ酸を電極上で完全に酸化するためにシュウ酸デカルボキシラーゼとギ酸デヒドロゲナーゼを共固定した電極を作製した。サイクリックボルタンメトリーおよびクロノアンペロメトリーによって酸化電流の測定を試みたが、残念ながらほとんど電流は得られなかった。グリセロールを二酸化炭素と水まで酸化する多段階反応の構築を目指し、Gluconobacter由来の脱水素酵素群も調製したが、多段階反応の最も上流に位置するグリセロール脱水素酵素の活性が低かった。こうした現状から多段階反応の実現には、酵素の活性化や安定化が重要であるという認識を得た。酵素を安定かつ高活性に保ちながら多段階反応を行う方法として細胞内の分子混雑環境を模倣する方法に着目し、酸化還元酵素の変性温度に及ぼす高分子添加剤の影響を調べた。ポリエチレングリコールを添加剤として用いたところ、逆に酵素は不安定化した。効率的な多段階反応の実現に向けて現在も検討中である。
すべて 2023
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Biotechnology and Bioengineering
巻: 120 ページ: 194-202
10.1002/bit.28267