研究課題
本研究は、①「複屈折を示すこと」と「材料が等方的であること」は同時に達成しうるか、及び②ヘリカルナノシリカの形状や配列によってシリカガラスの複屈折特性を制御できるかの2点を明らかにすることを目指し、研究を進めてきた。本年度は、マクロスケールのヘリカルナノシリカ成型体の作製を中心に進めた。両親媒性分子の自己組織化により、ヘリカルナノ構造のサイズや形態(ヘリシティ(右/左巻き)、曲率(ツイスト/ヘリカル)、リボン幅、リボン厚み、ピッチ、長さ、直径等)のヘリカルナノ構造体を作製した。得られたヘリカルナノシリカを用いて、quartz基板上にマクロに等方的なフィルム状成型体を作製した。この成型体はシリカのみで形成されるため、光吸収を示さないが、左右円偏光の散乱強度が異なるキラル光散乱を示すことを明らかにした。直線偏光特性評価およびSEM観察より、得られた成型体におけるヘリカルナノシリカの面内配向はランダム(等方的)であることを確認した。以上の結果から、面内方向における等方性を有する本材料において、左右の円偏光における屈折率が異なり、キラル光散乱現象が観測された可能性が示唆される。また、用いるヘリカルナノシリカのヘリシティ(右/左巻き)に対応してキラル光散乱のシグナル(正/負)が決まること、曲率やサイズによってシグナル強度が変わることも明らかにした。また、ライブラリ化検討をさらに拡張した検討として、様々な有機分子、量子ドットおよびロッドを複合化させた、紫外可視領域における光学異方性を示すヘリカルナノ構造体の作製にも成功した。以上の通り、本年度はヘリカルナノシリカの作製・ライブラリ化の更なる進展に加えて、シリカのみからなるマクロなヘリカルナノシリカ成型体の作製・特性評価を実施した。外部への研究報告については、学術論文(計5報)および学会発表(計10件)にて発表を行った。
すべて 2022 2021
すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 5件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (10件) (うち国際学会 7件、 招待講演 1件) 産業財産権 (2件)
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