研究課題/領域番号 |
19K15377
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
北澤 啓和 立命館大学, 生命科学部, 助教 (10773385)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 金属クラスター / ナノ粒子 / デンドリマー / 配位子 / 合金 / 触媒 |
研究実績の概要 |
粒径2 nm以下の原子数が数個から数十個で構成される金属クラスターの触媒機能は、粒径や組成等に強く依存するため、これらを精密に制御することは、触媒機能を改善する上で重要な課題である。金属クラスターの新たな触媒機能を解明するためには、単一の元素種だけではなく、二種類以上の元素種からなる多元金属クラスターの新たな合成法の開発が必須となる。従来の液相法等の一般的なナノ粒子の合成法では、任意の粒径や金属元素種・組成の多元金属クラスターの合成は困難である。本研究では、錯形成部位を有する有機配位子及び高分子を用いることで多元金属クラスターの新たな合成法の確立と触媒機能の創出を目指している。 前年度までに、ポリアミドアミンデンドリマー(PAMAM)を用いて、メソポーラスカーボン等の各種担体を用いることで粒径2 nm以下に制御した担持Auクラスターの合成に成功、合成したAuクラスターに錯形成部位を有する有機配位子を導入する手法を確立し、XAFSを用いることで有機配位子がAuクラスターに配位していることを明らかにした。Auクラスターに配位する錯形成部位を有する有機配位子と様々な金属塩との錯形成挙動について、UV-visタイトレーションにより評価を行い、有機配位子の錯形成部位と錯形成する金属塩を明らかにした。また、有機配位子と錯形成させた金属塩と担持Auクラスターとの二元金属クラスターの合成法の検討を行い、粒径2 nm以下の二元金属クラスターの生成を確認した。 本年度は、より詳細に多元金属クラスターの合成条件の最適化を行い、金属元素種の組成比の調製法を検討し、HAADF-STEM、EDS元素マッピング及びICPを用い粒径と組成比を、XPSを用い電子状態の測定を行った。 今後は、より詳細に多元金属クラスターの合成条件の最適化を行い、合成した担持二元金属クラスターの触媒機能の評価へ展開する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
PAMAMを用い、メソポーラスカーボン等の各種担体を用いることで粒径2 nm以下の担持Auクラスターの合成に成功し、XAFSを用いることで合成した担持Auクラスターに対し配位する有機配位子を見出し、合成したAuクラスターに有機配位子を導入する手法を確立した。Auクラスターに配位する錯形成部位を有する有機配位子と様々な金属塩との錯形成挙動について、UV-visタイトレーションにより評価を行い、有機配位子の錯形成部位と錯形成する金属塩を明らかにした。更に、HAADF-STEM、EDS元素マッピング、ICP及びXPSにより粒径、組成比及び電子状態の測定し、この金属塩と担持Auクラスターとの合金化を確認し、粒径2 nm以下の多元金属クラスターの新たな合成法を確立した。 しかし、合成した多元金属クラスター中の金属元素種の組成比の調製法の検討が必要となり、より詳細に多元金属クラスターの合成条件の最適化を行う必要性が生じた。更に、前年度から続くコロナ禍が影響し、測定機器の利用回数の自由度が減り、合成した多元金属クラスターの測定・評価に時間を要している。
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今後の研究の推進方策 |
本年度に引き続き、より詳細に多元金属クラスター中の金属元素種の組成比の調製法の検討を行い、合成した多元金属クラスターの粒径、組成比、電子状態・構造解析等をHAADF-STEM、EDS元素マッピング、ICP、XPS及びXAFS等を用いて評価を行う予定である。更に、合成した担持多元金属クラスターの触媒機能の評価を行い、Auクラスターの触媒機能と比較することで、多元金属クラスターの特異な触媒機能の探索を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、主に多元金属クラスターの合成法を確立するための合成条件の検討を行い、合成した二元金属クラスターの測定及び評価に従事したため、主に測定機器の利用料に要し、物品費の使用が予定より遅れた。また、前年度から続くコロナ禍が影響し、測定機器の利用回数の自由度が減り、測定機器の利用料の使用が予定より遅れた。次年度は、合成した多元金属クラスターの触媒活性を評価するための測定機器等を購入予定である。また、多元金属クラスターの合成に要する試薬・機器類の購入、合成した多元金属クラスターの測定・評価を行うため、HAADF-STEM、EDS、ICP、XPS及びXAFS等を測定するための利用料や旅費、迅速に研究成果を発表するため学会参加費や論文投稿費に使用する予定である。
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