極低温条件での電子顕微鏡観察では、試料を機械的に固定するしか方法がなく、導電性を確保したまま不定形試料を保持する方法は存在しなかった。二重結合残存料の多い酸化グラファイトとブタンジオールを混合することで、ドライアイス温度で流動性を持ち載台が可能であり、かつ液体窒素温度で固化する、水より高沸点な導電性接着剤を開発することに成功した。この導電性接着剤を用いることで、極低温条件でも試料帯電によるドリフトを抑えて高分解能観察できること、また元素分析が可能であることを凍結保存された生物試料等を用いて示し、論文投稿および学会発表を行った。また、高圧凍結試料断面の位置選択的な二次電子放出効率の測定のため、口径4mmを超えかつ軽量なファラデーカップを作成し、走査電子顕微鏡の真空チャンバー内で出し入れ可能な機構に組み込んだ。試料への吸収電流と試料より発生した二次電子の両方を同時に計測するシステムを構築し、また高圧凍結試料をファラデーカップ内部に挿入するための専用試料台も作成した。上記システムにより、常温ではあるが高圧凍結試料もファラデーカップによる電子数計測が可能となる道筋を示した。エマルションや低温条件への適用は現在試行中である。一方、当初予定していた二次電子像と反射電子像の差によるナノ粒子表面への溶媒吸着層厚みの決定は、反射電子像の撮影条件により同一粒子の粒径が数nm程度変化することが明らかになったため、厳密に決められないことが明らかとなった。
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