研究課題
光と電子の持つ本質的な量子効果を活用した光電融合型の省エネルギー情報処理基盤を構築するには、電力消費なしに情報を保持する電子のスピン状態と熱損失がない情報伝送を担う光との直接の光電変換が可能な半導体材料が必要不可欠である。そこで、本研究では実用光デバイス材料として知られ、電子のスピン状態を発光中に保持できる半導体量子ドットに着目し、室温での高効率な光電スピン変換の実現を目指した。はじめに、積層方向に対してドットサイズが単調に増加し、積層ドット間の波動関数が結合したサイズ変調結合量子ドットを開発し、極低温下で50%から最大80%に至る発光中のスピン偏極率の増幅を実現した。一方、室温ではスピン偏極率が10%以下に減少し、当初の計画通りには進まなかった。そこで、ダイナミクスの観点からその要因について調べ、バリア層から量子ドットへの電子スピンの熱的な再注入が室温特性を低下させることを明らかにした。上記の課題を解決するために、量子ドットを埋め込むキャップ層へpドーピングを行い、室温で支配的なスピン緩和機構であるD'yakonov-Perel効果を抑制したほか、疑似量子ドットに量子ドットを埋め込んだ低次元ヘテロ量子構造を提案し、室温で発光強度が1桁以上増加しただけでなく、量子ドット内の光電スピン変換効率が50%から80%に向上した。さらに最近では、室温で伝導電子のスピン偏極率を増幅できる希薄窒化GaNAsと実用光デバイス材料であるInAs量子ドットのトンネル結合構造を開発し、室温で90%、最高110℃で80%の世界最高の電子スピン偏極率を達成し、半導体スピントロニクスのボトルネックである室温動作の壁を打破した。また、pドープ量子ドットを光学活性層に用いたスピン偏極発光ダイオードも開発し、量子ドット発光ダイオードでは現在世界最高の円偏光度10%の電流スピン注入発光を室温で達成している。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 1件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (14件) (うち国際学会 5件、 招待講演 3件) 備考 (4件)
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