研究課題
二次元材料の積層ヘテロ構造を作製するための独自の転写技術「バブルフリー転写法」を確立させた。この方法では、ホームメイドの転写装置と半球状ポリマー表面を持つスタンプを用いて、半球の斜面の部分で二次元材料の転写を行った。これにより材料間に一定の角度を導入し、斜めから貼り合わせることで界面に気泡の入らない構造を実現することに成功した。この技術により、世界トップクラスの品質を持つ二層グラフェン/六方晶窒化ホウ素(hBN)積層構造デバイスを実現した。さらに、二層グラフェンとhBNの結晶方位角度を揃えて積層させたモアレ超格子構造を作製し、バレーホール効果を観測した。また、同構造を二重量子ドット型に微細加工した。このデバイスにおいて、二重量子ドットにおけるクーロンブロッケード効果およびフラクタル量子ホール効果(ホフスタッターの蝶)、二つの効果を同一のデバイスにおいて観測することに成功した。また、ランダウ量子化に伴うギャップにおいてクーロン振動が消滅する現象を観測した。このことは、単電子輸送と量子ホール効果の切り替わりを示唆している。また、特定の角度で折り重なった二層グラフェン(計四層)と、片方の二層グラフェンとhBNの結晶方位角度を揃えて積層させた二重のモアレ超格子構造を作製した。このデバイスを低温で測定した結果、二層/二層グラフェンと二層グラフェン/hBN、それぞれの超格子ポテンシャルがキャリア輸送特性に別々に現れることを見出した。また、hBN/四層グラフェン/hBN積層構造による量子ドットデバイスを作製し、低温にてクーロンブロッケード特性を観測した。
2: おおむね順調に進展している
積層構造作製技術の確立によりデバイス作製の歩留まりが大幅に向上し、高品質な二層グラフェン/hBNモアレ超格子を実現できている。さらに、モアレ超格子構造における二重量子ドット構造を実現できており、ほぼ当初の計画通りに進展している。
確立させたバブルフリー転写法を用いて、高品質な二層グラフェン/hBNモアレ超格子構造を作製し、さらにグラファイトで二重量子ドット型トップゲート+バックゲートを作製することで、電界効果によるポテンシャルでキャリア閉じ込めが可能な量子デバイスを作製する。これにより、少数電子数の量子ドットを実現し、その輸送特性のドット間結合依存性などを調べる。また、バレーホール効果と二重量子ドットにおける単電子輸送の両方が観測可能なデバイスを作製し、バレー流と単電子輸送の相関を調べる。
共用設備利用料金および出張費用に使用予定であった予算が、研究の進捗状況および出張不可能な状況もあり、次年度への繰り越しをせざるを得ない状況になった。本年度では、この予算で計測装置等の購入や、論文の掲載費用として利用することを検討している。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (10件) (うち国際学会 4件、 招待講演 1件) 備考 (1件) 産業財産権 (1件)
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https://samurai.nims.go.jp/profiles/iwasaki_takuya