研究課題
本研究において、二次元物質積層ヘテロ構造作製のための独自の転写技術「バブルフリー転写法」を確立させた。この方法では、自作の転写装置と半球状ポリマー表面を持つスタンプを用いて、半球の斜面の部分で二次元材料の転写を行う。これにより、材料間に一定の角度を導入し、斜めから貼り合わせることで界面に気泡の入らない構造を実現することに成功した。この技術により、世界最高水準品質のグラフェンデバイスが歩留まり良く作製可能となった。また、二層グラフェンと六方晶窒化ホウ素(hBN)の結晶方位角度を揃えて積層させたモアレ超格子構造を作製し、非局所測定を介してバレーホール効果を観測した。また、同構造を二重量子ドット型に微細加工したデバイスを測定し、クーロンブロッケード効果およびモアレ超格子特有の量子ホール効果(ホフスタッターの蝶)、二つの効果を同一デバイスにおいて観測することに成功した。また、ランダウ量子化に伴うギャップにおいてクーロン振動が消滅する現象を観測した。これは、単電子輸送と量子ホール効果の切り替わりを示唆している。また、特定の角度で折り重なった二層/二層グラフェンと、片方の二層グラフェンとhBNの結晶方位角度を揃えて積層させた二重のモアレ超格子構造を作製した。このデバイスを低温で測定した結果、二層/二層グラフェンと二層グラフェン/hBN、それぞれの超格子ポテンシャルの影響がキャリア輸送特性に別々に現れることを見出した。さらに、hBN/四層グラフェン/hBN積層構造による量子ドットデバイスを作製し、低温にてクーロンブロッケード特性を観測した。
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Carbon
巻: 175 ページ: 87~92
10.1016/j.carbon.2020.12.076