研究課題/領域番号 |
19K15386
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
柳瀬 隆 北海道大学, 工学研究院, 助教 (00640765)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | Feナノワイヤ / 化学気相蒸着法 / 形状磁気異方性 |
研究実績の概要 |
強磁性体ナノワイヤを創成することは結晶成長や形状異方性の大きな材料での磁化といった基礎科学的興味に止まらず、次世代の高密度記憶媒体・磁気抵抗素子の開発につながる重要なテクノロジーである。申請者は独自の流路分離型化学気相蒸着法を用いることにより、Feナノ粒子を触媒としてFeナノワイヤの作製に成功している。 本研究ではFeナノワイヤ中にヘテロ構造を作りこむことにより、面直通電型巨大磁気抵抗(CCP-GMR)素子を作製することを目的としている。今年度はFeナノワイヤの磁気特性の精密評価とヘテロ構造作製に必要なCVD装置の改良を行った。具体的には次の2点である。 ①Feナノワイヤの磁気特性を精密に評価したところ、Feナノワイヤが持つ形状磁気異方性による保持力の増大とマルチドメイン機構による磁区移動を示す磁気特性が得られた。また4端子法による抵抗の温度依存性評価から申請者が作製したFeナノワイヤは非常に高い結晶性を有することが示された。FeナノワイヤはVapor-Solid機構により成長しており、その成長端は非常に平坦なためヘテロ界面を作製するためのテンプレートとして最適であることを示せた。この内容に関する論文はCryst. Growth Des. 19, 7257 (2019).に掲載された。 ②Fe/Crヘテロ構造を作製するために必要なCrラインを追加し、加熱機構などが正常に動作することを確認した。このラインを利用して本年度ではFe/Crヘテロ構造の作製とCPP-GMR測定を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
CCP-GMR特性を評価するために必要な4端子法などの実験的技法を確立し、CVD装置にCrラインを新たに追加したが当初予定していたFe/Crヘテロナノワイヤの作製までには至らなかった。予算の都合でマスフローコントローラを購入できなかったため、流量制御の自動化を行うことができず、依然として流量計を手動で調整する必要があり実験に時間がかかっている。
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今後の研究の推進方策 |
Crラインを追加したことによりFe/Crヘテロ構造を作製できる準備が整ったので、ヘテロ構造作製条件の最適化を行う。また別の予算でマスフローコントローラを入手できる見込みが立ったので装置の完全自動化を行う。さらにCCP-GMR特性評価に必要なプログラムは構築したので、ヘテロ構造作製後すぐに詳細な基礎データ収集を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
おおむね予定通りの額を支出したが、消耗品の使用が少なく済んだため4772円の次年度使用額が生じた。
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