研究課題
本年度では、これまで開発してきた化学気相成長法(CVD法)を用いて、1次元の遷移金属カルコゲナイド原子細線の多量生成かつ配向制御合成に初めて成功してきた。具体的には、酸化シリコン基板上において、センチメートルスケールのテルル化タングステン(WTe)原子細線のランダムネットワーク薄膜を成長させた。また、成長基板をサファイア基板に変えることにより、WTeネットワークがランダムネットワークから配向性を持つ膜として合成できた。その結晶構造を透過型電子顕微鏡により確認し、断面観察から3次元および2次元的な形状の集合体が形成することが分かった。偏光ラマン分光測定を行った結果、WTeワイヤーが1次元的な偏光依存性を持つことを示した。一方、電子輸送測定により、単一のWTe束が単層カーボンナノチューブ並みの導電性を持つことや、WTe薄膜が金属的な温度依存性を示すことを明らかにした。本発見は、新しい高導電性薄膜の合成技術を実現しただけではなく、1次元ファンデルワールス物質からできた原子厚の2次元物質や3次元的な束構造、そして異種物質とのファンデルワールス接合による機能開拓などを可能にする新しい物質系を提供すると期待される。今回作製した新たな導電性薄膜に関する特許を出願中であり、また得られた研究結果は論文にまとめ、ナノ材料分野の主要雑誌の一つである「Nano Letters」誌に採択された。本成果は、関連分野である国内・国際会議で発表し、プレスリリースを行った。さらに、「Nature Electronics」やアメリカ科学振興協会(AAAS)のオンラインニュースサイト「EurekAlert!」などで広く紹介されている。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件) 備考 (5件) 産業財産権 (1件)
Advanced Science
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