本研究では、生体適合性の高い高分子鎖で表面が被覆され、内部が化学結合で固定されたナノ粒子(Furry Nanoparticles: f-NPs)の分子設計を行い、粒子構造・形態とその生体内動態を制御し、次世代のDDSナノ粒子のプラットフォーム技術を提案することを目指す。 本研究で用いたf-NPの表面は生体適合性の高いポリエチレングリコール(PEG)で被覆されており、またその粒子コアはシリコンネットワークによって架橋されいる。このナノ粒子表面のPEGの分子量を変化させた際に、ナノ粒子の血中滞留性が著しく変化した。本研究ではこの変化に着目し、ナノ粒子構造を小角散乱法により詳細に解析した。その結果、血中滞留性の高いf-NPのほうが粒子-水界面におけるPEG鎖密度が高いことが分かった。さらにこのPEG鎖密度の違いによって血中における粒子安定性だけでなく粒子に内包された分子の徐放挙動も変化することを見出した。本研究成果は、「J Control Release」へ報告済みである。 上記とは別のコア架橋構造から成るf-NP合成にも成功しており、その系においても血中において高い安定性を示すこと、さらにその安定性とPEG鎖密度との相関関係を見出している。さらに、そのコア架橋構造に外部刺激に応答して不安定化する結合を導入することで、任意の部位で内包した分子の放出が可能な設計となっている。この機能を用いた新たな薬剤送達システムが構築可能である。
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