研究課題/領域番号 |
19K15394
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研究機関 | 北九州市立大学 |
研究代表者 |
藤井 翔太 北九州市立大学, 環境技術研究所, 特任講師 (40794095)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 高分子ナノ粒子 / 小角散乱 / 薬物送達システム |
研究実績の概要 |
本研究では、生体適合性の高い高分子鎖で表面が被覆され、内部が化学結合で固定されたナノ粒子(Furry Nanoparticles: f-NPs)の分子設計を行い、粒子構造・形態とその生体内動態を制御し、次世代のDDSナノ粒子のプラットフォーム技術を提案することを目指す。 これまでに、血中においてもその粒子構造を安定に保持可能なf-NPの構築に成功した。さらに、その薬剤徐放挙動が、f-NP表面の高分子鎖の密度に依存することを明らかにし、報告してきた。また、内部構造が異なるf-NPに関しても、同様に高い血中滞留性を示すことを見出した。さらに外部刺激によりその架橋構造が崩壊するシステムを組み込むことで、薬剤リリースを制御可能なf-NPの創成にも成功した。この研究成果は、「Polymer Chemistry」に報告済みである。 昨年度の取り組みの中で、f-NPのようにナノ粒子表面において高分子鎖が高密度にグラフトされたボトルブラシ高分子(bottolebrush polymer: BBP)を基本構造とした新たなナノ粒子も開発した。このBBPにおいてもf-NP同様にその構造が化学結合により固定されており、血中においても高い構造安定性を示すことを見出した。また、BBPに抗ガン剤の一種であるDOXを付加したBBP-DOXが、腫瘍組織に対して高い浸透性を示し、かつ従来の高分子抗ガン剤に比べて、高い抗腫瘍効果を示した。この研究成果は「Biomacromolecules」に報告済みである。また、BBPやf-NPの構成する高分子鎖の種類によって、その組織浸透能が著しく変わることを見出している。このときナノ粒子構造もその組織浸透能において重要な因子となることが予想されるので、それらを精密に制御し、その因果関係の解明することに現在取り組んでいる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初予定していた血中滞留性の高いナノ粒子の創成とその構造と生体内動態の相関関係を解明することはおおむね達成された。また、そのナノ粒子を用いた抗ガン剤を構築し、その抗腫瘍効果についても報告しており、当初の研究計画の以上の成果が得ることができたため。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、より薬理効果の高いナノ粒子を構築するための知見を得るため、これまでの研究で構築してきたf-NPやBBPを用いて、その構造と組織浸透能や細胞認識能との相関関係を解明する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度は、コロナの感染防止対策のため大学の入構制限があり、予定していた実験に伴う消耗品や試薬の発注が出来なく、翌年に持ち越したため。
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