研究課題
最終年度である2021年度は2020年度までに取り組んできた膜透過ペプチド提示型ポリイオンコンプレックスベシクルを用いた植物カルスのゲノム編集に関する成果について基礎的なデータを収集し、その成果について論文投稿を進めた。前年度までの検討でオリゴリシンとその誘導体が形成するポリイオンコンプレックスベシクルに対して、脱水縮合を介した架橋型ポリイオンコンプレックスベシクルを作製し、さらに銅触媒を用いたクリックケミストリーにより膜透過性ペプチドを導入することで膜透過ペプチド提示型ポリイオンコンプレックスベシクルを調製した。本システムは膜透過ペプチドの提示によって細胞質内へのタンパク質の送達効率を飛躍的に向上することが分かっていた。本システムを用いたCRISPR/Cas9-gRNA複合体(RNP)の送達によって、植物カルスのゲノム編集について検討を行なった。その結果、RNP単独や膜透過ペプチドを提示していないポリイオンコンプレックスベシクルでRNPを送達した系などの対照群では一切のゲノム編集が確認されなかった一方でわずか0.007%ではあったが標的ゲノムのデリーションが確認された。すなわち、本システムは目的となるRNPを細胞内へとその活性を維持した状態で送達し、RNPが核内へと移行し、ゲノムを編集したことを意味している。現時点では、ゲノム編集効率は十分とはいえないが、選抜条件などの最適化によりゲノム編集による形質転換技術の確立が可能であると考えている。本研究成果についてはアメリカ化学会のACS Applied Nano Materialsに投稿、受理されている。この他に多糖やポリペプチド、ハイブリッド粒子などを基盤材料とした種々のソフトナノDDSを開発し、その低分子薬剤、タンパク質薬剤としての有用性を示し、これらの成果についてもSCI論文に投稿、受理されている。
すべて 2022 2021
すべて 雑誌論文 (8件) (うち査読あり 8件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 3件)
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