研究課題/領域番号 |
19K15406
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研究機関 | 大学共同利用機関法人自然科学研究機構(新分野創成センター、アストロバイオロジーセンター、生命創成探究 |
研究代表者 |
堤 元佐 大学共同利用機関法人自然科学研究機構(新分野創成センター、アストロバイオロジーセンター、生命創成探究, 生命創成探究センター, 特任助教 (60782422)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 蛍光顕微鏡 / 超解像顕微鏡 / イメージング / 転写因子 / 促進拡散 |
研究実績の概要 |
本研究課題は、転写因子のDNA相互作用において過渡的に生じるDNAリン酸骨格上での2次元拡散(促進拡散)挙動の生細胞核内での可視化を目指し、ミリ秒・ナノメートルスケールの時間・空間分解能での低侵襲観察が可能な超解像顕微鏡法を構築することを目的とする。2019年度は、連続取得画像の解析による超解像顕微鏡法SRRF(Super Resolution Radial Fluctuation)と共焦点顕微鏡および2光子顕微鏡での高速画像取得を組み合わせた高速超解像観察の検証を、固定蛍光染色標本を用いて行った。既存共焦点顕微鏡に新型レゾナントスキャナを導入し、高感度GaAsP型PMT検出器と併用することで、数ミリ秒毎の安定的な連続画像取得を実現した。それらの連続画像からSRRF処理を行い、当初の目標通り数十ミリ秒毎の超解像観察が可能であることを確認した。また、同様の高速スキャナ及び高感度検出器を既存の2光子顕微鏡に対しても導入し、SRRFを適用したところ、100マイクロメートル以深の試料深部での観察においても最速約25ミリ秒での超解像観察が可能であることが示された。さらに、当研究室独自のシステムであるスピニングディスク式2光子顕微鏡に対してもSRRF適用のための機器・観察条件の検討を進めた。カメラ前のリレーレンズの倍率を変更し、ピクセルサイズ及び蛍光強度のSN比の最適化を施した結果、上記のレゾナントスキャナ式2光子顕微鏡よりも60倍以上広視野で高速深部超解像観察が行えることを実証した。また、顕微鏡装置の改修と並行して、生細胞観察への本手法適用に向けた蛍光蛋白質・色素の検討も実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究計画の段階で想定していたよりも早期に共焦点顕微鏡の改修が完了し、新型レゾナントスキャナ・GaAsp検出器を用いた高速SRRF観察の実証を順調に進められ、目標通りの時間・空間分解能での観察を実証できた。さらに、計画段階では想定していなかった、単点走査型2光子顕微鏡での深部高速超解像観察にも成功したことから、当初の計画以上に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は、昨年度得られた知見の論文投稿作業を進めるとともに、SRRF処理に適した高SN比の画像取得が可能な蛍光蛋白質の選定を進め、顕微鏡システム側の安定性等の更なる最適化を行い、年度後半に生細胞核内での転写因子-蛍光蛋白質融合蛋白質の高速超解像観察を実施予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
計上していた旅費について、新型コロナウイルス感染拡大に関連して年度末に予定されていた出張が延期されたため、64,650円の差額が生じた。これは次年度の出張旅費に供する予定である。
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