研究課題
本研究課題は、転写因子のDNA相互作用において過渡的に生じるDNAリン酸骨格上での2次元拡散(促進拡散)挙動の生細胞核内での可視化を目指し、ミリ秒・ナノメートルスケールの時間・空間分解能での低侵襲観察が可能な超解像顕微鏡法を構築することを目的とする。前年度までの検証により、高速レゾナントスキャナ搭載レーザー走査型顕微鏡での観察に画像解析による超解像法SRRF(Super Resolution Radial Fluctuation)を適用し、最速約25ミリ秒毎に100ナノメートル以下の重心位置決定精度で観察が可能であることを実証した。また、申請者らの研究グループが有する2光子顕微鏡技術知見に基づいて、SRRFを2光子顕微鏡観察に適用(TP-SRRF)した結果、既存の超解像顕微鏡法では困難であった組織深部における超解像観察の可能性が示唆された。2021年度は、TP-SRRFの実証実験をさらに深化させ、主にマウス脳組織を対象に検証を進め、生物組織試料や生体内でのTP-SRRF観察の最適条件を確立した。その結果、透明化処理などの特別なサンプル処理を行わずとも、TP-SRRFでマウス脳スライスの数百マイクロメートル深部における神経細胞樹状突起スパインの微細形態の可視化に成功し、さらにマウス生体脳において大脳皮質最深部での超解像観察が可能であることを実証した。これらの成果について当年度の日本バイオイメージング学会学術集会で発表し、ベストイメージング賞(優秀発表賞)を受賞した。同内容については学術論文投稿準備を進めた。また、本研究に関連して北海道大学の共同研究者と実施したリモート超解像観察の実証実験成果について、当年度に顕微鏡研究者間の国際会議で講演した。さらに、本研究の一連の検証で得られた知見を元にSRRF観察を支援した共同研究成果について、共著論文を海外学術雑誌に発表した。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件)
iScience
巻: 24 ページ: 102994
10.1016/j.isci.2021.102994