研究課題/領域番号 |
19K15408
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
森廣 邦彦 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 助教 (70713890)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | DNAナノテクノロジー / マイクロRNA / Staudinger還元 / 生体直交型反応 / 核酸化学 / 化学療法 / HCR / 蛍光 |
研究実績の概要 |
2019年度は計画通りDNAプローブの配列最適化と化学修飾型DNAプローブの合成、miRNAに応答した低分子化合物の多重放出 (非培養細胞系) を検討した。核酸高次構造の安定性予測に広く用いられているオンラインソフトウェアNUPACKを利用し、3種類の異なる配列をもつプローブセットを設計・化学合成した。これらのプローブセットはHCRに最も大きな影響を与えるtoeholdと呼ばれる一本鎖領域の長さがそれぞれ異なっており (8-10ヌクレオチド)、反応の進行効率や選択性が異なると考えられる。それぞれのプローブセットについてゲル電気泳動でHCRの進行を評価したところ、toeholdが8ヌクレオチドの場合に最も良い結果を与えた。すなわち、標的であるmiR-21を加えていない場合はHCRがほとんど進行しないが、miR-21存在下ではHCR生成物である長鎖DNA二重鎖の形成が確認された。そこで以降の全ての実験ではtoeholdが8ヌクレオチドのDNAプローブを用いることとした。 続いて、Staudinger還元に必要なアジドおよびホスフィンで修飾したDNAプローブを合成した。Staudinger還元によって放出される低分子としては、ターンオン型の蛍光分子である7-アミノ-4-メチルクマリン (AMC) を搭載した。合成は、適切な位置にアミノ基をもつDNAプローブと各種NHS-エステルとのコンジュゲート反応によって実施した。 合成した化学修飾型DNAプローブにmiR-21を添加し、HCRと続くStaudinger還元によるAMCの放出を蛍光プレートリーダーを用いて評価した。その結果、加えるmiR-21の量が増加するに従いAMCの蛍光強度の増大が見られ、miR-21をトリガーとした低分子化合物の放出と活性化が可能であることが分かった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上述の通り、2019年度はmiR-21をトリガーとしたHCRプローブの配列最適化、アジドおよびホスフィンで修飾したプローブの合成、そして非細胞培養系においてmiR-21に応答した低分子化合物 (系高分子) 放出の評価を実施した。これらの実験により当初の設計通り特定のマイクロRNAに応答した低分子化合物の多重放出が可能であることが分かり、がん細胞特異的な化学療法の実現性を示すことができた。
|
今後の研究の推進方策 |
2019年度に得られた成果を基に、当初の計画通りがん特異的な化学療法の開発を進める。これまでに確立した手法を用いて、代表的な抗がん分子ゲムシタビン (GEM) を搭載したDNAプローブを化学合成し、薬効評価に用いる。miR-21を過剰発現しているHeLa細胞およびほとんど発現が認められないHEK293T細胞を評価に用いることで、薬効だけでなく選択性についても精査する予定である。
|