2020年度は前年度に引き続き、miR-21に応答した低分子化合物の多重放出の評価を進めた。前年度に達成した蛍光分子AMCに加え、色素分子Resorufinを搭載したDNAの合成および機能評価を実施した。Resorufinは放出によって水溶液の色彩が黄色からピンク色に変化することから、肉眼によってmiRNAの存在を検出できると期待した。この修飾DNAプローブとホスフィンを搭載したDNAプローブの混合液にmiR-21を添加したところ、期待通り添加量に伴って水溶液の色彩が変化する様子が観測された。これは、蛍光測定器などの特別な機器を必要としない簡便なmiRNA検出システムとしての発展が期待される。 また、低分子放出の効率や速度を改善するべくDNAプローブの再設計も実施した。特に、化学修飾を加える部位を種々検討した結果、これまでに用いていたプローブと比較して高効率で低分子化合物を放出できるプローブセットを見出した。 続いて、がんの選択的化学療法を達成するため、抗がん低分子化合物を搭載したDNAの合成に着手した。搭載する低分子化合物としては、当初予定したGemcitabineに加え、強力な抗がん活性をもつCamptothecinの誘導体であるSN-38も検討した。SN-38は光延反応によってリンカー分子に導入後、DNAとのコンジュゲーション反応に必要なNHS-エステル体へと誘導することに成功した。 さらに、DNAプローブの生細胞内への導入について精査した。蛍光標識したDNAプローブをmiR-21を高発現しているHeLa細胞にトランスフェクションして顕微鏡観察を行った結果、プローブの細胞内への導入とHCRの進行が確認できた。一方でmiR-21をほとんど発現していないHEK293T細胞ではHCRの進行は確認できなかったことから、miR-21に応答して細胞内HCRが起こっていることが分かった。
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