研究課題/領域番号 |
19K15410
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研究機関 | 東京工科大学 |
研究代表者 |
藤田 隆史 東京工科大学, 工学部, 助教 (30737565)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 金ナノ粒子触媒 / 抗炎症作用 / ナノメディシン / ナノリスク |
研究実績の概要 |
研究代表者は、酸化物ナノ粒子に金ナノ粒子を担持した“金ナノ粒子触媒”が抗炎症作用を示すという現象を細胞実験において見出している。本研究では金ナノ粒子触媒の抗炎症メカニズムの解明を行うことを目的とした。当該年度は、金ナノ粒子触媒のキャラクタリゼーション(透過型電子顕微鏡による金ナノ粒子の粒子径分布測定、動的光散乱による培地中の二次粒子の粒径測定、原子吸光による実担持量の測定等)を詳細に行ったうえで、金ナノ粒子触媒の触媒活性が細胞実験における抗炎症効果と関係があるかを検証した。 一般に、金ナノ粒子触媒の酸化反応に対する触媒活性は、担持する金ナノ粒子の粒子径に強く依存することが知られている。そこで、金ナノ粒子の平均粒子径が3~8 nmの金ナノ粒子触媒を調製し、生理的条件における過酸化水素の分解活性(細胞外の実験)と抗炎症作用に対する金ナノ粒子の粒子径の効果を調べた。過酸化水素は、炎症に関与する活性酸素種のモデル分子として用いた。その結果、過酸化水素の分解活性の実験においては、金ナノ粒子の粒子径が小さいほど過酸化水素の分解活性が高かった。その一方で、抗炎症効果について、この粒子径範囲において、有意な差を観察することができなかった。このため、現時点で触媒活性との関係性を議論するには至っておらず、別のメカニズムである可能性が示唆された。この結果と令和2年度までの研究成果と総合して、国際誌に論文発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和2年度における研究代表者の所属機関の変更やコロナ禍による研究機関の閉鎖による研究の遅れが尾をひいており、現時点で想定よりも進行が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
現時点で、当初の研究計画に記載した、担体に用いている金属酸化物の形状や粒子径、凝集・水への分散状態の制御が達成できていないため、この部分に取り組む。特に、水への分散性の高い金ナノ粒子触媒の合成は、抗炎症薬としての応用も期待できるため、積極的に取り組みたい。 また、機構解明のために、細胞環境下における金ナノ粒子触媒の表面に存在する化学種の分析を計画している。感度の観点から、現時点で表面増強ラマン散乱を用いた分子の分析が適しているのではないかと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍や所属機関の変更に伴い、令和2年度で研究が大幅に遅れたため、令和3年度の当該研究費の使用(特に物品費)において遅れが生じている。そのため、次年度使用額が生じた。 令和4年度の計画として、担体金属酸化物の形状、凝集・水への分散状態の制御を行う。このため、金属酸化物の合成に必要な試薬(各種金属塩等)や器具の購入、キャラクタリゼーションに使用する計画である。
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