金(Au)は、様々な金属酸化物(MOx)NP上に直径10 nm以下のナノ粒子(NPs)として堆積させたAu/MOxは室温においても、高い触媒性能を有するため、生物学的活性に影響を与える可能性がある。研究代表者は、MOxにAu NPsを担持したAu/MOxの細胞毒性を調べる研究において、Au/MOxが抗炎症作用を示すという現象を見出した。本研究ではAu/MOxの抗炎症メカニズムの解明を目的とし、マクロファージ細胞を対象に細胞毒性、貪食能、炎症プロファイルに及ぼすAu/TiO2、Au/ZrO2およびAu/CeO2の影響を調べた。 令和4年度は、粒子の細胞への内在化および実験再現性に影響を与えるAu/MOxの粒子径制御、pH7付近の水分散性の向上を目的とした。TiO2のゾルゲル法による合成段階にテトラエトキシシランを添加すると、TiO2/SiO2粒子の一次、二次粒子径が微小化し、さらにpH7における水への分散性の向上が観察された。 期間全体の成果:Au/MOxの抗炎症作用は、粒子の細胞への内在化に伴って生じ、細胞生存率および貪食能には影響を与えなかった。Au/MOxの効果はAu/TiO2 > Au/ZrO2 > Au/CeO2の順に効果が大きかった。さらに、Au/TiO2の効果は、Au NPsの粒子径とは関係がなく、MOx NPの効果に依存することが示唆された。細胞に内在化したAu/TiO2の透過型電子顕微鏡観察により、Au/TiO2は、細胞内の液胞に局在することが確認された。さらにAu/TiO2やAu/ZrO2がAu NPsを担持していないTiO2やZrO2と比較して、細胞内の活性酸素濃度が有意に低下していることが明らかになった。これらの結果から、抗炎症作用はAu NPsとMOxの複合化による活性酸素の除去に起因すると考えられた。
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