研究課題/領域番号 |
19K15413
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
甲斐 洋行 東北大学, 材料科学高等研究所, 助教 (00760167)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | ウェアラブルセンサ / 開放型流路 / 表面濡れ性 / 自己組織化単分子膜 / 無電解金めっき |
研究実績の概要 |
申請者が以前基本原理実証したフラクタル開放型流路を有する水滴収集フィルム上における,OpenFOAMソフトウェアを利用した水滴輸送挙動の数値シミュレーション手法を確立した。現在,様々な形状パラメータを有するフラクタル開放型流路における水滴収集挙動について定量的評価を行い,収集性能の高い構造の探索・検討を行っているところである。さらに今後は,凹凸を有する皮膚表面における汗収集能を検討するため,皮膚の表面構造の3Dスキャンデータ(シリコンレプリカ剤に転写した後に三次元測定機で測定する)を用いて,水滴収集フィルムを皮膚に貼り付けた際の水滴輸送の挙動を数値シミュレーションし,皮膚貼付け構造の妥当性について検証する。 また,これまでフラクタル開放型流路として酸化チタンナノ粒子とCapstone ST-100ポリマーの混合物を用いていたが,機械的耐久性に改善の余地があった。そこで,本研究ではフラクタル開放型流路の材料を改良するための検討を行った。既存の文献に従い,金基板にチオールSAMを形成した後PDMS製のスタンプでマスクしてUVオゾン洗浄装置で処理することで,マスクしていない部分のSAMのみを選択的に除去できることが水滴の接触角測定により示唆された。さらに,フラクタル開放型流路の形状のPDMSスタンプをSU-8フォトレジストを用いたフォトリソグラフィによって作製した。今後,SAM形成,パターンの除去,除去した部分への再度のSAM生成により,PDMSスタンプを用いたフラクタル流路のパターニングを可能になると期待される。 また,ポリグリシジルメタクリレートからなる多孔質マイクロニードルの表面を無電解金めっきしたマイクロニードル電極(2018年度までに基礎開発)に対して,グルコースオキシダーゼと高分子メディエータを修飾することで,試薬不要のグルコースセンサ電極となることを実証した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初予定していた,水滴収集フィルムへの皮膚貼付け機構の統合には未だ至っていないため。
|
今後の研究の推進方策 |
フォトリソグラフィーによって皮膚貼付け機構と水滴収集機構を一体化したデバイスの作製プロセスの検討を行い,生体あるいは発汗模擬デバイスを用いた皮膚表面上への貼付および汗収集能の検討を行う。また,チオールSAMによる金表面への濡れ性パターニングの検討を引き続き行い,さらに皮膚貼付可能なフィルム上でのパターニングへと展開する。 多孔質マイクロニードル電極の開発については,センサ電極としての基本性能は実証できたものの,長時間溶液に浸漬した際の金の剥離などの課題が明らかとなったため,耐久性・生体安全性のより高い材料の利用を検討する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初購入を予定していた機器について,計画変更によって購入を取りやめたため。
|