研究課題/領域番号 |
19K15416
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
竹原 宏明 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 助教 (60723088)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | バイオデバイス / 埋め込みデバイス / 生体吸収性材料 |
研究実績の概要 |
Point-of-care-testing (POCT)の概念は、糖尿病患者の血糖モニター検査や妊娠検査等の普及に見られるように、世界中で診断機器、診断薬としての地位を築いている。バイオマーカーに代表される診断に有用な分子情報を体内で直接計測する技術が確立されれば、患者個人レベルでの精密な医療や超早期診断を実現する画期的なパラダイムシフトをもたらすことが期待される。体内での分子検出の技術的な障壁は、夾雑物だらけの生体環境において、高濃度の血中タンパク質(~70 mg/mL)に起因する偽シグナルの排除と、分離・洗浄・反応工程を伴わないリアルタイム計測が不可欠な点にある。本研究では、上述の課題解決を目指し、 低侵襲生体計測デバイスシステムの研究を進める。本年度は、材料工学的アプローチによる生体計測用デバイスの製造プロセスに関する研究を主に進め、高分子材料の高次構造を制御した医用マイクロデバイスの精密成型加工プロセスを構築した。具体的には、Kolmogorov-Johnson-Mehl-Avrami (KJMA) 式を用いたポリマー材料の結晶化における速度論的解析に基づき、結晶化プロセスの熱履歴及び結晶化時間と結晶化度の関係を明らかにするとともに、高分子材料を用いた溶融成型によるマイクロモールディングプロセスを構築し、高分子の高次構造制御を伴う精密成型加工技術を開発した。生体適合性を有するポリマー材料の加工プロセス技術は、医療デバイス開発を支える基盤技術として重要であり、低侵襲医用マイクロデバイス製造技術としての応用が期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の主要な成果として、低侵襲生体計測デバイスシステムの実現に向け、基盤要素技術の一つである生体適合性を有するポリマー材料を用いた医用マイクロデバイスの加工プロセスの構築を達成した。本研究で構築したポリマー材料の結晶化における速度論的解析に基づく精密成型加工プロセスは、高分子材料の高次構造変化に伴う材料特性を制御したマイクロデバイスの成型加工を可能とし、低侵襲医用デバイス製造技術への応用が期待される。さらに、血液中分子の計測システムについても、バイオマーカー等の特定分子検出に向け、マイクロ蛍光分光法を基盤とした計測システムを構築し、光エネルギー吸収による光熱変換効果及び自家蛍光の影響に関する検討が着実に進んでいる。以上の進捗状況を踏まえ、当初の計画通り順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
マイクロデバイス製造における設計の自由度・制御性、形状の再現性、量産性の観点より、加工プロセスの評価を進める予定である。また、材料強度や光学特性に影響を与える高分子の結晶化度・配向性に着目し、材料物性を制御した加工プロセスについても検討を進める。さらに、マイクロ蛍光分光計測システムを用いた血液中分子検出について、検出下限濃度の検討を進める予定である。
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